「太陽光投資は利回り10%」は2013年の話——今の中古・新規を実額で検証【2026年版】
2013年組(FIT36円)は実質7.6%で本当に儲かった太陽光投資。しかし今の中古「表面10%」は残存FIT期間だけの見せかけの数字で、2026年新規の低圧は現金買いでも赤字です。買取価格の推移・収支モデル3パターン・銅線盗難ラッシュまで実額で検証しました。
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「国が20年間、固定価格で買い取ってくれる。利回り10%で確実」——2013年頃、太陽光投資はこんな売り文句で広がりました。今も中古太陽光の販売サイトを覗くと、「表面利回り10%超」の物件がずらりと並んでいます。
先に結論を言うと——2013年に始めた人は、本当に儲かっています(実質利回り7%台)。しかし今の中古「表面10%」は、残った売電期間の収入だけで作った見せかけの数字で、多くは購入額すら回収できないままFITが終了します。さらに2026年に新規で低圧太陽光を始めると、現金一括で買っても売電収入が維持費を下回り、毎年赤字になります。加えて銅線盗難ラッシュ、保険料の高騰、出力抑制の無補償、21年目の崖まで待っています。
「儲かった時代の実績」と「今売られている物件」の間に何が起きているのか、数字で順番に見ていきます。
先に結論:ウワサと現実の対照表
| ウワサ | 検証結果 |
|---|---|
| 「利回り10%で確実」 | 2013年組は本当(実質7%台)。今の新規・中古では再現不能 |
| 「国が20年保証」 | 制度としては事実。ただし原資は**国民の電気代(再エネ賦課金)**であって、国が払うわけではない |
| 「今の中古も表面10%だから儲かる」 | 嘘。残存FIT期間だけの数字で、購入額すら回収できずにFITが終了するケースが多い |
| 「2026年に新規で始めても大丈夫」 | 嘘。現金買いでも年間の売電収入(60万円)が維持費(70〜100万円)を下回る |
| 「20年間ほったらかしでOK」 | 嘘。盗難・出力抑制(無補償)・保険高騰・パワコン交換・21年目以降の崖が待っている |
そもそもFITとは——「国の保証」の中身
FIT(固定価格買取制度)は2012年7月に始まった制度で、電力会社に太陽光の発電量を20年間、固定価格で買い取ることを法律で義務付けています。「国が保証」という触れ込みの根拠はここにあります。
ただし見落とされがちなのが原資です。電力会社が支払う買取費用は、再エネ賦課金として全国民の電気代に上乗せされています。国庫から出ているわけではなく、私たちの電気料金がその原資です。「国が保証」自体は制度として事実ですが、支えているのは国民全員という構図になっています。
そしてこの買取価格は、太陽光の普及とともに下がり続ける設計です。
| 設置年度 | 買取価格(10kW以上・1kWhあたり) |
|---|---|
| 2012年 | 40円 |
| 2014年 | 32円 |
| 2019年 | 14円 |
| 2023年以降 | 10円前後 |
同じ発電量でも、いつ設置したかで売電収入は4倍近く違います。「利回り10%」という看板が生まれたのは、この表の一番上、40円台だった時代の話です。
検証①:バブル期の真実——2013年組は本当に儲かった
まず”元祖”のケースから見ます。2013年にFIT36円で設置したモデルです(投資額2,000万円・年間発電量60,000kWh想定)。
- 年間売電:60,000kWh × 36円 = 216万円 → 投資額に対し表面利回り10.8%
- 経費(メンテ15万+保険20万+税30万):目安年65万円
- 実収:216万円−65万円=約151万円/年 → 実質利回り約7.6%
- 20年累計実収:約2,870万円。ここからパワコン交換費100万円を引いても、投資2,000万円に対し**+700〜800万円の利益**
看板そのままの「利回り10%」ではありませんが、経費を引いた実質7%台という数字は、多くの金融商品を上回る水準です。2013年組が儲かったこと自体は本当です。問題は、この時代の成功体験が、条件のまったく違う今のセールストークとして使い回されていることです。
検証②:今の中古「表面10%」の正体
中古太陽光の販売サイトでよく見る「表面利回り10%」の物件を、実際の数字で分解します。設定は2015年設置(FIT18円)・残り売電期間10年・販売価格1,080万円という、よくある中古案件です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間売電 | 60,000kWh × 18円 = 108万円 |
| 表面利回り | 108万円 ÷ 1,080万円 = 10% |
| 経費(保険高騰後・目安) | 年60〜95万円 |
| 実収 | 年13〜48万円 |
| 残存10年の累積実収 | 130〜480万円 |
表面利回り10%という計算自体は間違っていません。ですが実際に手元に残るのは年13〜48万円で、10年分を積み上げても130〜480万円。購入額1,080万円すら回収できないうちにFITが終了します。
さらに21年目以降(卒FIT)は買取単価が7〜9円まで下がり、年間売電は48万円前後になる一方で経費は60万円超——毎年赤字に転じます。撤去・廃棄には別途50〜100万円が必要です。
つまり中古の「表面10%」は、残った売電期間の収入だけを切り取って作った数字です。「残り何年でFITが切れるか」と「切れた後どうなるか」は、価格表のどこにも書かれていません。
検証③:2026年新規・低圧は成立しない
では今、新規で低圧太陽光(50kW未満)を始めたらどうなるでしょうか。現在の買取価格はFIT10円です。
- 投資額2,000万円・年間発電量60,000kWh × 10円 = 年間売電60万円
- 維持費(メンテ15万+保険25〜60万+税25万+廃棄積立6万):目安年70〜100万円
- 売電収入(60万円)が維持費(70〜100万円)を下回る——ローンを組まず現金一括で買っても、毎年赤字
もはや「利回り何%か」を議論する以前の話です。これが、新規の低圧太陽光販売がほぼ姿を消し、業界の提案が自家消費や蓄電池とのセットモデルに置き換わっている理由です。「2026年に太陽光投資を単体で始める」という選択肢自体が、ビジネスとして成立しません。
検証④:運用リスク4連発——20年間、何もないわけがない
「安泰」の看板を崩すのは収支計算だけではありません。20年の運用期間中に確実に発生する、見落とされがちなコストです。
- 出力抑制(無補償):九州電力管内では2024年度に6.4%、2026年度は6.9%見込みで、「晴れているのに発電をカットされる」措置が発生します。しかも補償はゼロです
- 保険料の大幅値上げ:2022年10月に約3割値上げ、2024年10月にさらに値上げされました。盗難が多い地域では引受拒否の事例も出ています
- パワコン交換:寿命10〜15年で、交換費用は低圧で35〜100万円。ほぼ全案件で1回は発生する確定コストです
- 廃棄費用の積立義務化:2022年7月から、売電期間後半10年間で廃棄費用が源泉徴収的に天引きされる制度が始まっています
これらはすべて、購入時のシミュレーションに織り込まれていないか、資料の隅に小さく書かれているだけのコストです。
売電収入がある人は記帳を自動化しておく
太陽光の売電収入は確定申告の対象で、メンテ費・保険料・償却資産税・減価償却と経費項目が多いビジネスです。マネーフォワード クラウド確定申告なら口座連携で入出金を自動で拾えるので、収支の実態把握(実質利回りの計算)にもそのまま使えます。
マネーフォワード クラウド確定申告を無料で試す →検証⑤:銅線盗難ラッシュ——「山の中の無人ATM」
さらに近年急増しているのが、太陽光施設を狙った銅線ケーブルの盗難です。
銅価格の高騰で、パネルとパワコンをつなぐ銅線ケーブルが換金性の高い標的になりました。人里離れた低圧太陽光は夜間に無人になるため、業界内で「山の中の無人ATM」と呼ばれるほど狙われています。
被害が突出しているのが茨城県です。
- 2022年:636件
- 2023年:1,675件(前年比+163%・全国ワースト)
- 2024年:5月末時点ですでに1,042件
全国の金属窃盗は2023年に16,276件、2024年は年換算で2,500件超のペースといわれています。1回の被害額は150〜300万円、しかも盗まれると発電できなくなるため売電停止が1〜2ヶ月続きます。夜間の組織的犯行が多く、盗まれたケーブルはスクラップ業者経由で流通するため、犯人の追跡は困難です。2024年の古物営業法改正で買取制限が始まりましたが、防犯カメラの設置費用は投資家の自己負担、保険も免責引き上げや引受拒否が広がっていて、「盗まれたら自腹」という構図になりつつあります。
この状況を映してか、太陽光を含む再生可能エネルギー関連事業者の倒産・休廃業は2024年度に52件で過去最多を記録しました(帝国データバンク調べ)。案件を売った業者が、その後のメンテナンスやトラブル対応の場面ではもう存在しない、というリスクも現実に起きています。
加えて、そもそもの発電量シミュレーションを盛って販売する事例も問題化しており、2019年には国が初めて認定を取り消す事案も出ています。
それでも検討するなら——最低限やるべきこと
ここまで否定的な数字を並べましたが、「太陽光投資=絶対NG」と言いたいわけではありません。2013年組が実際に儲かったように、条件次第では今も成立する案件はあります。検討する場合の最低限のチェックポイントです。
- 中古案件は「残存FIT期間の実質利回り」を自分で引き算する:販売価格の表面利回りではなく、「残り年数×(売電単価−実際の経費)」で累積実収を計算し、購入額を何年で回収できるかを自分で出す。業者の試算をそのまま信じない
- 21年目以降(卒FIT)の収支も別枠で試算する:多くの試算はFIT期間の20年だけで終わっている。卒FIT後の単価7〜9円で黒字になるか、撤去費用の積立ができているかを確認する
- 盗難多発地域を避ける、または防犯投資を織り込む:茨城県のような被害集中地域では、防犯カメラ・センサーライトの費用と、保険の引受可否を事前に確認する
- 保険の見積もりを購入前に取る:引受拒否や高額な保険料が判明してから利回りが崩れるケースがあるため、購入の意思決定より先に保険会社へ確認する
- 業者の財務状況を確認する:倒産・休廃業が過去最多の業界であることを踏まえ、施工後もメンテナンス対応が続けられる会社かを見極める
よくある質問
Q. 「国が20年間買取を保証」は嘘ですか?
A. 制度としては本当です。ただし買取費用の原資は再エネ賦課金という形で国民全員の電気代から支払われており、国庫負担ではありません。また出力抑制がかかった分は補償の対象外です。
Q. 今から中古の太陽光を買うのはやめたほうがいいですか?
A. 「表面利回り10%」という数字だけで判断するのは危険です。残存FIT期間・卒FIT後の単価・撤去費用まで含めた実質利回りを自分で計算し、それでもプラスになる価格でなければ見送るべきです。
Q. 2026年に新規で太陽光投資を始めるのはありですか?
A. 低圧太陽光の単体投資としては、現在の買取価格(10円前後)では現金一括で買っても年間の維持費を売電収入が下回り、成立しません。新規は自家消費や蓄電池とのセット提案が主流になっているのはこのためです。
Q. 盗難やトラブルへの保険には入れますか?
A. 入れる場合もありますが、2022年・2024年と保険料の値上げが続いており、盗難が多発した地域では引受拒否の事例も出ています。購入前に見積もりを取ることが必須です。
というわけで——「儲かった時代の実績」で「儲からない物件」が売られている
まとめます。
- 2013年組(FIT36円)は本当に儲かった——実質利回り約7.6%、20年で+700〜800万円の利益
- 今の中古「表面10%」は残存FIT期間だけで作った数字——購入額すら回収できずにFITが終わるケースが多い
- 2026年新規の低圧太陽光は現金買いでも赤字——売電収入60万円が維持費70〜100万円を下回る
- 20年の運用期間には出力抑制(無補償)・保険高騰・パワコン交換・廃棄費用という確定コストが待っている
- 銅線盗難ラッシュ(茨城県2023年1,675件)と業者倒産52件(2024年度)が、「ほったらかしで安泰」を崩している
「利回り10%・国が20年保証」は、2013年という特定の時代に、特定の条件で成立した実績です。その実績を看板に、今は儲からない条件の物件が売られている——これが数字から見える構図です。検討するなら、表面利回りではなく、残存期間・経費・出口までを自分で計算してからにしてください。
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この記事の主な参照データ:資源エネルギー庁 FIT買取価格資料/経済産業省 次世代電力系統ワーキンググループ資料/帝国データバンク 再生可能エネルギー関連動向調査(2024年度)/太陽光の盗難・保険料に関する業界公開資料(2023〜2024年)