「サブリースの家賃保証があるからノーリスク」は嘘——30年保証が法律上は幻である理由【2026年版】
サブリースの借上げ賃料は満室想定の80〜90%で、2年ごとに減額される。借地借家法32条・最高裁判例・かぼちゃの馬車事件の実数から、「家賃保証=ノーリスク」の嘘を検証しました。
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「30年一括借り上げの家賃保証が付くので、空室リスクはありません」
アパート経営・土地活用の営業で必ず出てくるこのフレーズ。「保証」と言われると、投資の不安が消えた気がしますよね。
先に結論言うと——「家賃保証があるからノーリスク」は、法律のレベルで嘘です。
- 保証される賃料は満室想定の**80〜90%**からスタート
- その保証額は2年ごとの見直しで減額されうる。「30年保証します」という契約を結んでいても、です
- 根拠は借地借家法32条。最高裁判例(平成15年)で、サブリース契約でも賃料減額請求権は排除できないと確定しています
- そして構造上、オーナー側からは解約しづらい
このカラクリを知らないまま契約した人たちがどうなったか——約700人のオーナーが平均1〜2億円の借金を抱えた「かぼちゃの馬車事件」まで含めて、数字で検証します。
先に結論:ウワサと現実の対照表
| 営業トーク | 検証結果 |
|---|---|
| 「30年一括借り上げで安心」 | 幻。賃料は2年ごとに見直され、減額請求は契約でも排除できない(最高裁判例) |
| 「家賃保証でノーリスク」 | 嘘。保証額自体が下がる。ローン返済額は下がらない |
| 「満室想定の90%を保証」 | 初回だけ。減額で85%→80%→75%と下がる例が典型 |
| 「嫌ならやめればいい」 | 困難。サブリース会社は法律上”借主”として保護され、オーナーからの解約には正当事由が必要 |
| 「大手だから安心」 | 大手でも施工不良・減額トラブルは起きている |
サブリースの仕組み——誰が何%取るのか
サブリース(一括借り上げ)は、サブリース会社があなたのアパートを一棟まるごと借り上げ、入居者に転貸する仕組みです。
- オーナーが受け取るのは満室想定賃料の80〜90%
- 差額の10〜20%がサブリース会社の取り分。一般的な管理委託(5%前後)の2〜4倍
- その代わり空室でも保証賃料が入る——というのが売り文句
ここまでは対価関係として理解できます。問題は次の「保証が保証でない」部分です。
検証①:「30年保証」が法律上は幻である理由
サブリース契約はオーナー(貸主)とサブリース会社(借主)の賃貸借契約です。そして日本の借地借家法32条には、経済事情の変動などに応じて賃料の減額を請求できる権利が定められています。
ポイントは2つ:
- この条文は強行法規——「減額請求しない」という特約を契約書に入れても無効
- 最高裁は平成15年の判決で、サブリース契約にも32条が適用されると判断した
つまり「30年間、この賃料を保証します」という契約書があっても、サブリース会社は法律を根拠にいつでも減額を求められる。実務では2年ごとの賃料見直し条項が入っており、周辺賃料の下落や築年数を理由に、初回3〜10%、以降も数%ずつ下がっていくのが典型例です。
「保証」されているのは「その時々の見直し後の金額」だけ。30年間の金額は誰も保証していません。
検証②:減額されると収支はどう崩れるか(モデル試算)
新築アパート(満室想定・月80万円)をローンで建てた場合のモデル試算です。
| 初年度 | 10年目 | 15年目 | |
|---|---|---|---|
| 満室想定賃料 | 80万円 | 75万円 | 70万円 |
| 保証率 | 85% | 80% | 75% |
| オーナー受取 | 68万円 | 60万円 | 52.5万円 |
| ローン返済 | -50万円 | -50万円 | -50万円 |
| 修繕費(目安) | -3万円 | -5万円 | -7万円 |
| 手残り | +15万円 | +5万円 | ▲4.5万円 |
賃料は市場に合わせて下がり、保証率も下がる。一方でローン返済額は30年間ほぼ一定。この非対称が、10年目以降にじわじわ効いてきます。営業資料の収支表は、ほぼ例外なく「初年度の数字が30年続く」前提で書かれています。
※これは仕組みを示すためのモデル試算です。実際の減額幅は物件・立地・契約で異なります。
検証③:最悪のケースは実際に起きた——かぼちゃの馬車事件
「保証する会社そのものが倒れたら?」の実例が、2018年のシェアハウス「かぼちゃの馬車」(運営:スマートデイズ)事件です。
- 「30年一括借り上げ・想定利回り8%」を掲げて販売
- オーナー約700人が、平均1〜2億円の融資を受けて物件を購入
- 2018年1月、サブリース賃料の支払いが停止。運営会社は経営破綻
- 融資を出したスルガ銀行では、審査資料の改ざん等の不正が発覚。金融庁から投資用不動産融資の一部業務停止命令という重い行政処分
- 最終的に、物件を銀行側へ引き渡す代わりに借金を整理する異例のスキームで決着した
保証賃料が止まっても、銀行へのローン返済義務は1円も消えません。「家賃保証があるから大丈夫」の「保証」は、保証する会社の体力までは保証しないのです。
大手なら安心とも言い切れません。レオパレス21では界壁などの施工不良が約19.5万戸規模で発覚し、入居停止・改修問題に発展しました。
検証④:法律ができても止まらない
この手のトラブルを受けて、2020年12月に**賃貸住宅管理業法(サブリース新法)**が施行されました。
- 「家賃保証」とだけ謳う誇大広告の禁止(減額の可能性を併記する義務)
- 契約前の重要事項説明の義務化
前進ではあるものの、この法律は「説明していないこと」を罰するもので、減額そのものは禁止していません(借地借家法32条が生きている以上、できない)。説明書類の小さな文字を読み飛ばして契約し、数年後の減額通知で初めて気づく——という相談は、法施行後も続いています。
検証⑤:やめたくてもやめられない——立場の逆転現象
サブリースの一番不気味な性質がこれです。
賃貸借契約では借主が法律で強く保護されます。そしてサブリース契約における借主は——サブリース会社です。
- サブリース会社からの減額請求・解約 → 法律上スムーズにできる
- オーナーからの解約 → 「正当事由」が必要で、「賃料が安すぎるから」は原則認められない。中途解約に高額な違約金が設定されている例もある
「入居者を守るための法律」が、プロの会社を守る盾になる。この逆転を知らずに、「不満なら管理会社を変えればいい」感覚で契約すると詰みます。
それでもサブリースが合理的なケース
公平のために書くと、サブリースが悪の制度というわけではありません。機能する条件がはっきりしているだけです。
- 遠隔地の物件で、空室対応も含めて完全に手放したい(手数料10〜20%は”外注費”として納得できる)
- ローンがない・自己資金比率が高い——減額されても赤字にならない収支構造
- 契約前に「見直し条項の周期と過去の減額実績」「解約条件と違約金」「修繕費の負担区分」を書面で確認できる
逆に言うと、フルローンの新築アパート×サブリースは、減額とローンの板挟みになる最も危険な組み合わせです。「相続税対策になりますよ」と地主に建てさせる営業は、建築費とサブリース手数料で建てる側が確実に儲かる構造であることも頭に入れておいてください。
よくある質問
Q. 契約書に「賃料固定」と書いてあれば大丈夫?
A. 大丈夫ではありません。借地借家法32条は強行法規なので、特約があっても減額請求は可能というのが最高裁判例の立場です。
Q. サブリースと管理委託、どっちがいい?
A. 空室リスクを自分で持てるなら管理委託(手数料5%前後)の方が手残りは大きくなります。サブリースは「10〜20%払って空室の心配を外注する」商品として、収支が赤字にならない範囲でだけ検討するものです。
Q. すでに契約している場合はどうすれば?
A. まず契約書の見直し条項・解約条項・違約金を確認してください。減額通知が来ている場合、金額の根拠資料(周辺賃料データ)を求めることはできます。揉めている場合は、不動産に強い弁護士や自治体の窓口への相談が現実的です。
というわけで——「保証」という言葉を数字に翻訳する
まとめます。
- サブリースの取り分は満室想定の80〜90%、手数料は管理委託の2〜4倍
- 「30年保証」は法律上存在しない。賃料は2年ごとに見直され、減額特約の排除は最高裁判例で否定済み
- 減額されてもローンは減らない。フルローン×サブリースが最も危険な組み合わせ
- 保証会社自体が倒れた実例あり(約700人・平均1〜2億円の借金)
- オーナーからは解約しづらい(借主保護の逆転現象)
- 機能するのは「ローン負担が軽く、手数料を外注費と割り切れる」ケースだけ
「保証」という言葉が出てきたら、「誰が・いくらを・いつまで・どんな条件で」に翻訳して契約書で確かめる。この一手間が、億単位の借金と30年の後悔を防ぎます。
このシリーズでは「儲かるらしい」系のウワサを数字で検証しています。「自販機を置くだけで儲かる」の検証、「ほったらかしで稼ぐ」系の現実検証もあわせてどうぞ。
この記事の主な参照データ:借地借家法32条/最高裁平成15年10月21日判決/金融庁のスルガ銀行に対する行政処分(2018年10月)/スマートデイズ破綻に関する報道・裁判資料(2018年)/レオパレス21の施工不良に関する公表資料/賃貸住宅管理業法(2020年12月施行)