街のハンコ屋はなぜ潰れない?脱ハンコ後も続く印鑑の店の稼ぎ方を数字で検証【2026年版】

2020年に行政手続の99%超で押印廃止が決まっても、駅前のハンコ屋は今も開いています。全日本印章業協会の会員名簿647店を自分で数え、会社設立・相続の件数、実印の相場、京都の加盟店数の推移から、印鑑の店がどう稼いでいるのかを数字で検証しました。

ハンコ屋印鑑脱ハンコ実印開業副業検証

※当サイトはアフィリエイトプログラムに参加しています。記事内のリンクから商品を購入すると、当サイトに報酬が支払われることがあります。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。

2020年11月13日、河野太郎行政改革担当大臣(当時)は会見で、押印を求めていた行政手続14,992種類のうち14,909種類について、押印を廃止する決定または廃止の方向だと発表しました。割合にすると**99.4%**です(内閣府 河野大臣記者会見要旨 2020年11月13日)。

それから6年。駅前や商店街のハンコ屋は、今も普通に店を開けています。ハンコがほとんど要らなくなったのに、なぜ店が続いているのか。国・業界団体・通販サイトの公開データと、業界団体の会員名簿647店を自分で数えた結果から、印鑑の店の稼ぎ方を並べました(数字はすべて2026年9月24日時点で確認)。

先に一覧:ウワサと数字の対照表

ウワサ数字で見ると
「ハンコはもう要らない」行政手続の99.4%で押印廃止。ただし残った83種類は印鑑証明・登記・銀行届印など重いものばかり
「ハンコの出番はもうない」2025年の新設法人は15万7,011社(1日約430社)、死亡数は158万9,489人
「ハンコ屋はハンコだけ売っている」協会名簿で紹介文のある440店のうち、ゴム印213店・名刺132店・印刷124店・表札89店
「ハンコ屋は潰れない」京都府の組合加盟店は約15年で約130店→42店
「ハンコは儲かる商品」事業者側は「粗利益70%」と説明。ただし実印は通販で機械彫り1,000円〜、認め印は100均で110円

そもそも:何のハンコが残ったのか

同じ会見で、押印が残る83種類について大臣は「印鑑証明が必要なもの、登記・登録関係、それから銀行への届印」と説明しています。同時に**「本人確認にならない認め印は全て廃止」**という方針も示されました(出典は上記の会見要旨)。

つまり脱ハンコで消えたのは、主に誰でも買える認め印を押すだけの手続きです。役所に登録して印鑑証明を出す実印、会社の登記で使う会社の実印、銀行に届け出る銀行印は残りました。

その後の動きもこの線に沿っています。

時期変わったこと出典
2020年11月行政手続14,909種類で押印廃止が決定・方向内閣府
2021年9月1日婚姻届などの押印が任意に法務省
現在大手銀行が印鑑なしで口座を持てるサービスを提供みずほ銀行・三菱UFJ銀行

婚姻届も銀行も「押さなくていい」側に動いています。ハンコの出番は確実に減りました。減っていないのは、実印と会社の印鑑が必要な場面です。

検証①:実印が必要になる人は、毎年どれだけいるか

実印が必ず出てくる場面として、ここでは会社をつくるときと相続の2つを数字にしました。

会社は1日約430社できている

東京商工リサーチによると、2025年に新しく設立された法人は15万7,011社で、3年連続で過去最多でした(東京商工リサーチ)。

365日で割ると、1日あたり約430社です。会社をつくると、登記用の会社の実印に加えて、銀行印・角印を3本そろえることが多くなります。いわゆる「会社印3本セット」です。

相続は年158万件の「入口」がある

厚生労働省の人口動態統計(月報年計・概数、2026年6月公表)によると、2025年の死亡数は158万9,489人でした(厚生労働省)。1日あたり約4,350人です。

亡くなった人の財産を家族で分けるときに作る遺産分割協議書には、相続人全員の実印と印鑑証明を付けるのが一般的です。全員が相続手続きをするわけではありませんし、すでに実印を持っている人もいます。それでも「実印を作っていなかった家族が、ここで初めて作る」という需要は、毎年この人数を入口にして発生します。

認め印の需要は消えても、会社設立と相続という2つの需要は、2025年の数字で見ても減っていません。

検証②:全国647店の名簿を数えたら、ハンコだけの店は少なかった

ここからは自力の実測です。全日本印章業協会のサイトには、都道府県別の会員店舗名簿が載っています(全日本印章業協会 会員店舗)。2026年9月24日に全ページを集計しました。

項目実測値
名簿に載っている店647店(46都道府県)
多い都道府県東京89店・大阪38店・愛知34店…京都27店
店の紹介文がある店440店

紹介文がある440店について、書かれている商品・サービスを数えました。

紹介文に書かれていたもの店数440店に占める割合
ゴム印213店48.4%
名刺132店30.0%
印刷(はがき・封筒など)124店28.2%
表札89店20.2%
名刺・表札・印刷・合鍵のどれか189店43.0%
合鍵(明記)1店0.2%
手彫り63店14.3%
一級(印章彫刻技能士)128店29.1%

先に限界を書いておきます。 数えたのは協会に加盟している店だけで、非加盟の店は入っていません。また、紹介文に書いていない商品は数えていないので、実際に扱っている店はこれより多い可能性があります。

それでも傾向ははっきりしています。約半分の店がゴム印を扱い、4割超が名刺・表札・印刷のどれかを書いている。ゴム印は住所や社名の入ったスタンプで、会社や店が事務用に何本も使うものです。名刺や封筒の印刷も会社が相手です。名簿の紹介文を見るかぎり、会社相手の商品を並べている店が多いことが分かります(客数の内訳ではありません)。

なお「ハンコ屋=合鍵」のイメージがありますが、名簿の紹介文で合鍵を明記していたのは1店だけでした。

検証③:1本売っていくら残るのか

値段の幅がとても広い

商品価格出典
認め印(100円ショップ)110円@DIME
実印15mm・機械彫り約1,000円〜ハンコヤドットコム 相場表
実印15mm・手仕上げ(黒水牛)3,000〜6,000円同上
実印15mm・手彫り(黒水牛)7,000〜28,000円同上
会社印3本セット(ネット)約3,760〜13,210円ハンコヤドットコム等3社の表示

同じ実印でも、機械で彫るか手で彫るかで最大28倍の差があります。そしてネットの大手通販は、サイト上で**「年49万件出荷」**と表示しています(同サイトの表記)。安い価格帯は通販と100円ショップがかなり押さえている、ということです。

粗利は高いと言われている

ハンコ店のフランチャイズを募集している「はんこ広場」の加盟募集ページは、**「粗利益70%」「市場規模約1,700億円といわれる」「開業資金270〜500万円前後」**と説明しています(はんこ広場 FC募集ページ)。これは加盟店を募集する事業者側の主張で、第三者の統計ではない点に注意してください。

この「原価3割」をそのまま使って、会社印セット1件を試算します。

項目金額(試算)
会社印3本セット10,000円
原価(3割・FC募集ページの目安)-3,000円
手元に残る7,000円

※販売価格は上の価格帯から置いた仮定値。原価率は事業者側の説明を当てはめた試算です

7,000円はここから家賃・光熱費・自分の人件費を払う前の金額です。月の家賃が10万円なら、それだけで会社印セット約15件分になります。1件あたりの利益率は高くても、件数が少ないと固定費に負ける商売です。

検証④:それでも、実際には減っている

京都では約3分の2が消えた

京都新聞(2020年9月24日)によると、京都府の印章業協同組合の加盟店は、約15年前の約130店から42店に減ったと報じられています(京都新聞)。

130店から42店は、約68%の減少。3店に2店が消えた計算です。同じ記事では、残った店が落款(書や絵に押す印)やシーリングスタンプ(手紙の封に押す飾り)など、趣味向けの商品に活路を見いだしている様子も伝えられています。

業界団体も「非常に厳しい」と書いている

全日本印章業協会は、令和7年度の事業計画で**「高齢化等で会員の減少により協会の運営が非常に厳しい」**と書いています(全日本印章業協会 事業計画)。業界団体が自分で減少を認めている、ということです。

店主が別の仕事を持っている

Business Insider Japan(2020年)の取材で、全日本印章業協会の副会長は、ハンコ屋さんには不動産業など別の仕事をしている人が多いと話しています(Business Insider Japan)。

ここで見えてくるのは、店の売上だけで生活を成り立たせていない店が一定数あるということです。自分の持ち家の1階で店をやっていれば家賃はかかりません。別の収入があれば、ハンコの売上が少ない月でも店を閉める理由になりません。

結論:潰れないのではなく、潰れた店が見えにくい

ここまでの数字をまとめると、「ハンコ屋は潰れない」は正確ではありません。

  • 京都では約15年で約3分の2の店が減った
  • 業界団体は会員減少で運営が「非常に厳しい」と書いている
  • 閉まった店はシャッターが下りるだけで、話題にならない

潰れていないのではなく、潰れた店が目に入らないだけです。そのうえで、今も残っている店には共通点があります。

残る店の条件根拠の数字
実印・会社印・相続の需要をつかんでいる新設法人15万7,011社/年・死亡数158万9,489人/年
ハンコ以外も売っている紹介文のある440店のうちゴム印213店、名刺・表札・印刷・合鍵のどれか189店
固定費が軽い・別収入がある持ち家なら家賃ゼロ。副会長「別の仕事をしている人が多い」

ハンコ1本の利益率は高くても、それだけで店は回りません。会社相手のゴム印・名刺・印刷で件数を稼ぎ、家賃がかからない形で続けている。これが「潰れない」ように見える店の実際の姿です。

都合の悪い話と、いい話

悪い話

  • 認め印は100円ショップで110円。安い価格帯の勝負は最初からできない
  • 実印も通販なら機械彫りで1,000円〜。大手通販は年49万件の出荷を表示している
  • 京都の加盟店は約3分の2が減少。業界団体も運営が厳しいと書いている
  • 「粗利益70%」「市場規模約1,700億円」は加盟店を募集する事業者側の説明で、第三者の数字ではない

いい話(こちらも同じ量ある)

  • 押印が残った83種類は、印鑑証明・登記・銀行届印という本人確認に使う重いハンコ。ここは廃止されていない
  • 会社は2025年に15万7,011社できて、3年連続で過去最多。会社印の需要の入口は増えている
  • 相続の入口になる死亡数は年158万9,489人
  • 手彫りの実印は7,000〜28,000円と、機械彫りの何倍もの値段がつく。技術に値段がつく商品である
  • 落款・シーリングスタンプなど、実用ではなく趣味のハンコという新しい売り先がある

ちなみに10月1日は**「印章の日」**です。明治6年(1873年)の太政官布告で、証書に実印を押すことが定められたことに由来しています(シヤチハタ公式メディア)。約150年続いた「実印を押す」仕組みは、脱ハンコのあとも登記と相続の場面で残っています。

ウワサ格付け:「ハンコ屋を継げば儲かる」= Cランク

軸点数理由
再現性2 / 5京都では約15年で約3分の2の店が減った。残っている店は持ち家・別収入など条件がそろっている
稼げる額2 / 5会社印セット1件で手元7,000円(試算)。仮に家賃10万円なら約15件分が家賃で消える(家賃は仮定)
始めやすさ2 / 5FC募集ページの開業資金は270〜500万円前後。一級の印章彫刻技能士など技術の壁もある
リスク2 / 5認め印は110円、実印も通販で1,000円〜。価格競争の相手が大きい
手間2 / 5ゴム印・名刺・表札・印刷の併売が前提になり、扱う商品が多い
合計10 / 25Cランク

「継げば儲かる」は、家賃がかからない店舗と、会社相手の取引先がすでにある場合に限った話です。ゼロから店を借りて始めると、1本あたりの利益率の高さより、件数の少なさと家賃のほうが先に効いてきます。

まとめ:数字はこうだった

  • 押印が必要な行政手続**14,992種類のうち14,909種類(99.4%)**で廃止が決定・方向(2020年11月・内閣府)
  • 残った83種類は印鑑証明・登記・登録・銀行届印。「本人確認にならない認め印は全て廃止」
  • 婚姻届などの押印は2021年9月1日から任意(法務省)
  • 2025年の新設法人は15万7,011社、1日約430社(東京商工リサーチ)
  • 2025年の死亡数は158万9,489人(厚生労働省・概数)
  • 協会名簿647店を集計。紹介文のある440店のうちゴム印213店・名刺132店・印刷124店・表札89店
  • 京都府の組合加盟店は約15年で約130店→42店(京都新聞)
  • 会社印セット1万円・原価3割なら手元7,000円(試算)。ここから家賃と光熱費

同じように「なぜ潰れないのか」を数字で見た記事として、クレーンゲーム店はなぜ潰れないのかとおにぎり屋の利益の実態も出しています。店を持たずに小さく始める例なら、Canvaテンプレートを3ヶ月販売した実数が参考になります。副業の所得が年20万円を超える会社員は、確定申告の判定方法も確認しておいてください。

この記事の内容は、YouTubeの動画版でも解説しています。

出典

資料使った数字
内閣府 河野大臣記者会見要旨(2020年11月13日)14,992種類中14,909種類で押印廃止・存続83種類
法務省 婚姻届等の押印の任意化2021年9月1日から押印任意
みずほ銀行 印鑑レス口座印鑑なしの口座
三菱UFJ銀行 印鑑レス口座印鑑なしの口座
東京商工リサーチ 2025年新設法人調査新設法人15万7,011社・3年連続過去最多
厚生労働省 人口動態統計月報年計(概数)2025年死亡数158万9,489人
京都新聞(2020年9月24日)京都府の加盟店 約130店→42店・趣味用に活路
全日本印章業協会 事業計画「会員の減少により協会の運営が非常に厳しい」
全日本印章業協会 会員店舗名簿647店・440店の紹介文を筆者が集計
ハンコヤドットコム 会社印セット会社印3本セット 約3,760〜13,210円(3社の表示)
ハンコヤドットコム 印鑑の相場実印15mmの価格帯・年49万件出荷(同サイト表記)
@DIME100円ショップの認め印110円
はんこ広場 FC募集ページ粗利益70%・市場規模約1,700億円・開業資金270〜500万円前後(事業者側の主張)
Business Insider Japan(2020年)「別の仕事をしている人が多い」(全印協副会長)
シヤチハタ公式メディア 印章の日10月1日・明治6年の太政官布告

会員店舗名簿の店数・商品別の店数は、2026年9月24日に全日本印章業協会サイトの名簿を筆者が集計した実測値です。協会非加盟の店は含まず、紹介文に書かれていない商品は数えていません。割合・1日あたりの件数・減少率・会社印セットの手元額は、上記の公開データをもとに筆者が計算した値で、その旨を本文に明記しています。

【無料登録】AIスキルを出品「ココナラ」

ChatGPT活用・プロンプト販売・AI画像生成など、自分のAIスキルを出品して副収入。会員登録は無料。

無料で始める →