10月から時給が上がるのに手取りが減る人は誰?最低賃金1,177円と「106万円の壁」撤廃をタイプ別に計算した【2026年10月版】

2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円(+56円)、東京1,280円。10月1日には社会保険の賃金要件(月8.8万円)も撤廃。パート・学生・フルタイムの4タイプで、10月以降の手取りを一次資料の保険料額表から計算しました。

最低賃金106万円の壁130万円の壁社会保険パート扶養酒税

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2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均1,177円。前年度の1,121円から56円の引き上げで、47都道府県すべての答申が9月3日に出そろいました(厚生労働省「令和8年度最低賃金額答申」)。同じ10月1日には、パートの社会保険加入ルールから「月8.8万円以上」という賃金の条件が消えます。

時給が上がるのは、うれしい話です。ただし「壁」の近くで働いている人は、時給が上がったせいで手取りが減ることがあります。誰がどちら側なのか、東京都の最低賃金と協会けんぽ東京支部の保険料額表を使って、4つのタイプで計算しました(2026年9月25日に一次資料を確認)。

先に結論:タイプ別の早見表

あなたのタイプ(東京・時給は最低賃金)10月からどうなる目安(自前計算)
学生アルバイト(週15時間)得する側月+3,510円
フルタイム(週40時間)得する側月+9,360円(税金を引く前)
大きい会社のパート(週20時間)ほぼ変わらない社会保険は10月前から加入対象
小さい会社のパート・扶養内(週20時間)要注意契約上の年収が127.5万円→133.1万円で130万円を超える

「106万円の壁がなくなる」と聞いて慌てる必要がある人は、実はほとんどいません。気をつけるべき線は週20時間と130万円です。

最低賃金2026:主要都府県の金額と発効日

厚生労働省が公表した答申状況(別紙)から主要な都府県を抜き出しました。発効日は都道府県ごとに違い、10月1日から12月2日までばらばらです。

都道府県改定後改定前引上げ額発効日(予定)
東京1,280円1,226円+54円10月1日
神奈川1,279円1,225円+54円10月1日
大阪1,231円1,177円+54円10月1日
埼玉1,196円1,141円+55円10月1日
千葉1,195円1,140円+55円10月1日
愛知1,195円1,140円+55円10月1日
北海道1,131円1,075円+56円10月1日
福岡1,114円1,057円+57円10月4日
宮崎(最低額)1,085円1,023円+62円10月24日
沖縄(いちばん遅い)1,086円1,023円+63円12月2日
全国加重平均1,177円1,121円+56円―

出典:厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」(別紙PDF)。発効日は「異議の申出の状況等により変更となる可能性有」と注記されています。

住んでいる県の発効日までは、古い金額のままです。岩手・熊本は12月1日、沖縄は12月2日なので、10月の給料では上がりません。

そもそも「106万円の壁」とは何だったのか

パートやアルバイトでも、条件を満たすと会社の健康保険と厚生年金に入ります。これまでの条件の1つが「月の賃金が8.8万円以上」でした。8.8万円×12か月≒106万円なので「106万円の壁」と呼ばれてきました。

日本年金機構は、この要件を「令和8年10月に撤廃予定」と案内しています(日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」)。施行日を令和8年10月1日とする政令は、9月11日の官報に公布されたと報じられています。

撤廃のあとに残る主な条件はこうです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 学生でないこと(一部例外あり)
  • 勤め先が従業員51人以上の会社など(企業規模要件)

なぜ「撤廃しても変わらない」のか

日本年金機構の説明では、撤廃の理由は「最低賃金以上で週20時間以上働く場合は、所定内賃金が月額8.8万円以上となるため」です。

実際に計算すると、東京の旧最低賃金1,226円で週20時間働くと、月約106,253円(1,226円×20時間×52週÷12か月)。すでに8.8万円を超えています。いちばん低かった宮崎の旧額1,023円でも月約88,660円です。つまり時給の条件は、最低賃金の上昇で先に意味がなくなっていたのです。

検証①:大きい会社のパートは「週20時間」が本当の線

従業員51人以上の会社で働くパートの場合、境目は時給ではなく週20時間です。東京の新最低賃金1,280円で、週19時間と週20時間を比べました。

働き方月の給料社会保険料(本人負担)手元に残る(社会保険料のみ差し引き)
週19時間約105,387円0円(加入対象外)約105,387円
週20時間約110,933円約15,609円約95,324円

社会保険料は、協会けんぽ東京支部の令和8年3月分からの保険料額表の標準報酬月額110,000円の欄(40歳未満)から、健康保険5,417.5円+子ども・子育て支援金126.5円+厚生年金10,065円を足しました。

週に1時間増やしただけで、手元に残る額が月約1万円減る計算です。ただしこれは10月に始まった話ではなく、10月の前から同じです。

そのかわり、もらえるもの

保険料は払い損ではありません。厚生年金の報酬比例部分は「平均標準報酬月額×5.481÷1000×加入月数」で計算されます(日本年金機構「報酬比例部分」)。標準報酬月額110,000円で1年加入すると、年約7,235円が老後の年金に一生上乗せされます。10年続ければ年約7.2万円です。病気で休んだときの傷病手当金も、会社の健康保険に入るとついてきます。

検証②:時給が上がって手取りが減るのは「小さい会社の扶養内パート」

従業員50人以下の会社で週20時間働く人は、今は会社の社会保険に入りません。家族の扶養に入っている場合、気にする線は年収130万円です。

2026年4月から、扶養に入れるかどうかは労働条件通知書などの契約内容から見込まれる年収で判断されるようになりました(厚生労働省 事務連絡 令和8年3月9日)。時給×契約の時間で計算するということです。

東京・週20時間・交通費なし契約上の年収(×52週)130万円
時給1,226円(10月まで)1,275,040円下回る
時給1,280円(10月から)1,331,200円上回る

同じ週20時間でも、時給が54円上がっただけで130万円を超えます。扶養から外れると、国民年金の保険料月17,920円(令和8年度・日本年金機構)、年215,040円を自分で払うことになります。国民健康保険料も別にかかります(金額は市区町村で違うため今回は計算に入れていません)。

時給アップで増える分は、年56,160円(54円×20時間×52週)。国民年金だけで年約15.9万円のマイナスです。

出口:週19.5時間なら収まる

週19.5時間の契約なら、1,280円×19.5時間×52週=1,297,920円で130万円を下回ります。週30分の調整で済みます。逆に、扶養を外れてもしっかり働く方向なら、年収が大きく増えるまで働くほうが手取りは戻ります。どちらにするかは、次の契約更新の前に決めておくのが安全です。

検証③:学生とフルタイムは「得する側」

学生アルバイト

昼間の学生は、週20時間以上でも会社の社会保険の対象外です。時給アップはそのまま収入の増加になります。週15時間なら月+3,510円(54円×15時間×52週÷12)。

19歳から22歳の人が親の健康保険の扶養に入る場合、年収の上限は150万円未満です(厚生労働省「年収の壁」への対応)。時給1,280円なら週約22.5時間まで。時給1,226円のときの週約23.5時間から、上限までの時間は週1時間ほど縮みます。

フルタイム

最低賃金で週40時間働く人は、月の給料が約212,507円→約221,867円で月+9,360円(税金を引く前)。社会保険料の等級は、どちらも標準報酬月額220,000円(210,000円以上230,000円未満)の欄なので、保険料は同じ金額のままです。

10月1日に変わる、もう2つのお金

ビール系の酒税が一本化

2026年10月から、ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税は1キロリットルあたり155,000円(350ml換算54.25円)に統一されます(財務省「酒税に関する資料」)。9月30日までの税率(国税庁「酒税率一覧表」)と比べると、350mlあたりはこう動きます。

種類9月30日まで(1klあたり)10月1日から350mlあたりの差
ビール181,000円155,000円−9.10円
新ジャンル134,250円155,000円+7.26円
発泡酒(麦芽比率25%未満)134,250円155,000円+7.26円

税額の差なので、店頭価格がこのとおり動くとは限りません。

加熱式たばこの課税方式が2段階目へ

加熱式たばこは、重さで紙巻たばこの本数に換算する方式への見直しが、2026年4月と10月の2段階で進んでいます(国税庁「加熱式たばこに係る課税方式の見直しについて(令和8年4月1日〜)」)。

よくある質問

106万円の壁がなくなったら、パートは全員社会保険に入るの?

いいえ。週20時間未満の人、学生、従業員50人以下の会社で働く人は、10月1日以降も原則として対象外です。企業規模の条件は2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へと段階的に広がります(日本年金機構)。

最低賃金はいつから上がる?

都道府県ごとに違います。東京・神奈川・大阪・愛知などは10月1日、宮崎は10月24日、沖縄は12月2日です(いずれも答申時点の予定)。

扶養の130万円は、残業代も含めて判定される?

2026年4月からは、労働契約で決まっていない時間外労働の賃金は、見込み年収の計算から外す扱いになりました(厚生労働省 事務連絡)。契約の時給と時間が基準になります。

時給が上がって扶養を外れそうなときは?

契約の時間を少し減らす(例:週20時間→19.5時間)か、扶養を外れても手取りが戻るところまで働くかのどちらかです。国民年金だけで年215,040円かかる点を前提に決めてください。

ウワサ格付け:「時給が上がれば手取りも増える」= Aランク

軸点数理由
再現性3 / 5学生・フルタイムは増える。扶養内の小さい会社パートは逆転しうる
稼げる額2 / 5月+3,510円〜+9,360円
始めやすさ4 / 5何もしなくても時給は上がる
リスク2 / 5130万円を超えると国民年金だけで年215,040円
手間4 / 5壁の近くの人だけ、契約時間の確認が必要
合計15 / 25Aランク

まとめ:数字はこうだった

  • 最低賃金は全国加重平均1,177円(+56円)、東京1,280円、発効は10月1日〜12月2日
  • 月8.8万円の賃金要件は10月撤廃予定(日本年金機構)。ただし最低賃金×週20時間はすでに月8.8万円を超えていた
  • 大きい会社のパートは週20時間が線。週19時間→20時間で手元に残る額は月約1万円減る(社会保険料のみの計算)
  • 小さい会社の扶養内パートは、東京で週20時間だと契約上の年収が133.1万円になり130万円を超える
  • 学生・フルタイムは得する側。関連:タイミーのスキマバイトで実際いくら残るか、金利上昇で儲かるのは誰か

次の一手は1つだけ。自分の労働条件通知書の「時給×週の時間×52」を計算して、130万円と比べてください。

出典

計算はすべて筆者の試算です。前提:東京都・40歳未満・協会けんぽ東京支部・交通費なし・年52週。雇用保険料・所得税・住民税は含めていません。最低賃金の発効日は答申時点の予定で、変更される可能性があります。個別の扶養判定は加入している健康保険に確認してください。

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