「AI投資で月利10%」は本当か——100万円を10年回すと927億円になる算数と、配当の出どころ・被害統計・見分け方【2026年版】
『AIが自動で運用して月利10%』という投資広告を数字で検証。月利10%を複利で回すと100万円は1年で約314万円、10年で約927億円になり、日本の年金運用(GPIF)の年率+4.95%とは1年で40倍以上の差。配当は新しい人の預け金で払える仕組みで、警察庁の統計ではSNS型投資詐欺は2025年に9,523件・1,288.0億円、2026年上半期は前年同期の約2倍でした。
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「AIが24時間、自動で運用します。月利10%」。SNSや動画サイトの広告で、こうした投資話を見かけることが増えました。
この記事では、月利10%という数字そのものを計算し、その配当がどこから出てくるのかを試算したうえで、警察庁・金融庁・国民生活センターの公表資料から被害の実態と見分け方をまとめます(2026年9月18日時点)。特定の業者や人物を名指しする記事ではありません。数字と公的機関の公表内容だけを扱います。
先に結論:ウワサと現実の対照表
| ウワサ | 検証結果 |
|---|---|
| 「AIに預けるだけで月利10%」 | 複利で回すと100万円が1年で約314万円、10年で約927億円。そんな運用を続けられる仕組みは現実にない |
| 「プロ並みのAIだから高利回り」 | 日本の年金積立金を運用するGPIFの長期平均は年率+4.95%(2001年度〜)。月利10%は1年あたりで比べて40倍以上 |
| 「毎月ちゃんと配当が振り込まれている」 | 10人から100万円ずつ集めれば、何もしなくても10か月は月利10%の配当を払える。配当が入ることは本物の証拠にならない |
| 「出金もできたから安心」 | 金融庁は「最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られる」事例を公表。警察庁は「利益の出金手数料名目」でだまし取る手口を定義に書いている |
| 「元本保証だから損しない」 | 元本保証をうたって不特定多数から出資金を集めることは出資法第1条で禁止(違反は3年以下の拘禁刑など) |
そもそも:「月利」と「AI投資の広告」
月利は、1か月でお金が何%増えるかです。お小遣い1万円が1か月で1万1,000円になれば月利10%です。銀行の金利や投資の成績は、ふつう「年利(1年で何%)」で表します。月利で書かれた広告は、それだけで数字が小さく見える点に注意が必要です。
広告の流れは、金融庁の注意喚起ページ「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」によると、おおむね次のとおりです。
- 動画サイトやSNSの広告、「AI診断」をうたうウェブサイトから、SNSの投資グループへ誘導する
- グループには「講師」「先生」「アシスタント」が登場し、投資の指南をする
- 証券口座を装ったスマホアプリで取引させ、利益が出ているかのように装う
- 最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる
「AIが運用している」と言われても、外から見えるのはアプリの画面に表示される数字だけです。画面の数字は、実際に運用していなくても表示できます。
検証①:月利10%を複利で回すとどうなるか
増えた利益も引き出さずに預け続ける(複利)と仮定して、100万円を月利10%で回した場合を計算しました。
| 期間 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 1年後 | 100万円 × 1.1の12乗 | 約314万円(年あたり約214%増) |
| 2年後 | 100万円 × 1.1の24乗 | 約985万円 |
| 3年後 | 100万円 × 1.1の36乗 | 約3,091万円 |
| 5年後 | 100万円 × 1.1の60乗 | 約3億円 |
| 10年後 | 100万円 × 1.1の120乗 | 約927億円 |
比較対象として、日本の公的年金の積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、市場運用を始めた2001年度以降の平均収益率を年率+4.95%、累積収益額を**+221.0兆円**と公表しています。世界最大級の年金基金が25年かけて出した平均が「1年で約5%」です。月利10%は1年あたり約214%なので、40倍以上の差があります。
もう1つの矛盾は、「本当に月利10%を出せるAIがあるなら、なぜ知らない人のお金を集めるのか」です。10年で100万円が927億円になる仕組みを持っているなら、他人に声をかけるより自分の資金で回し続けるほうが得です。
なお、投資そのものでお金が増えること自体は本当です。ただしそれは「長く続けて少しずつ増える可能性がある」という話で、毎月◯%を約束するものではありません。金融商品取引業者は、利益が確実であるかのように誤解させる勧誘(断定的判断の提供)を法律で禁じられています。
検証②:配当はどこから来るのか——10人・100万円の試算
配当が毎月振り込まれていると、本物だと思いたくなります。そこで、運用を一切しない業者が月利10%の配当を払い続けられるかを試算しました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 10人が100万円ずつ預ける | 1,000万円 |
| 毎月の配当(10%×10人) | 100万円 |
| 運用ゼロでも配当を払える期間 | 10か月 |
つまり、新しく集めたお金を前の人の配当に回すだけで、10か月は約束どおりの配当が払えます。こぎ続けないと倒れる自転車操業なので、配当を払い続けるには新しい出資者を集め続ける必要があります。「知らない人にまで勧誘してくる」理由はここにあります。
配当を受け取った側から見るとどうなるか。金融庁が公表している「最初は出金できるが、まとまった金額では断られる」流れと、警察庁が定義に書いている「利益の出金手数料名目」を当てはめた試算です(金額は説明用の仮定)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 預けたお金 | −100万円 |
| 3か月の配当(月10万円) | +30万円 |
| 「出金手数料」として追加で払ったお金 | −20万円 |
| 手元に残ったお金 | −90万円 |
受け取った30万円は、もとをたどれば自分が預けた100万円の一部です。国民生活センターは、いったん振り込んでしまうと被害の回復は困難だと注意喚起しています。
検証③:被害はどれくらい起きているのか——警察庁の統計
警察庁の「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年5月22日公表)によると、2025年のSNS型投資詐欺は次のとおりです。
| 項目 | 2025年(確定値) |
|---|---|
| 認知件数 | 9,523件(前年比+48.5%) |
| 被害額 | 1,288.0億円(前年比+47.9%) |
| 1日あたりの件数(件数÷365) | 約26件 |
| 被害時の連絡ツール | LINEが8,906件=9割以上 |
| 当初接触ツール(上位) | Instagram 1,934件/YouTube 1,229件/LINE 1,211件 |
| 入口がバナー等広告だった被害のうちYouTube | 1,024件(前年の約21倍) |
2026年に入っても増加は続いています。警察庁の「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」では、2026年1〜6月のSNS型投資詐欺は5,893件・797.9億円で、前年同期比は件数+105.1%・被害額+126.0%、つまり約2倍です。お金をだまし取られた1件あたりの被害額は1,362.5万円でした。ラーメン1杯1,000円で換算すると約1万3,600杯、毎日1杯食べて約37年分です。
年代別では、2026年上半期は50代が1,605件、60代が1,518件で、この2つの年代で認知件数の53.0%を占めます。ただし20代の被害も出ており、「若いから関係ない」とは言えません。
警察庁は同じ資料で、著名人をかたる広告の特徴として次の4点を挙げています。
- 動画において、口の動きと声が合わない、日本語の表記が誤っているなど不自然である
- 著名人をかたっているのに未認証アカウントを使用している
- LINE登録に誘導する
- 「必ずもうかる」「元本保証」等の甘い文句で誘う
見分け方は4つ——そして本物の「自動の投資」
| チェック | 根拠 |
|---|---|
| ①「元本保証」をうたっている | 出資法第1条は、元本以上を返すと示して不特定多数から出資金を受け入れることを禁止。違反は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(第8条) |
| ②金融庁の登録がない | 金融商品取引業は登録を受けた者でなければ行えない。登録は金融庁の登録業者検索で確認でき、金融庁は無登録で警告書を出した業者の名称も公表している |
| ③振込先が個人名義の口座 | 国民生活センターは「投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺です」と明言 |
| ④有名人の動画で口と声がずれている | 警察庁が挙げる著名人なりすまし広告の特徴 |
一方で、「自動で投資してくれる」サービスすべてが怪しいわけではありません。金融庁に登録した会社が提供するロボアドバイザーのように、利益の約束はしない代わりに手数料や投資先が公開されている自動運用もあります。見分けるポイントは「月利◯%を約束しているか」「登録があるか」です。
もしお金を払ってしまった、あるいは「おかしいな」と思った時点で、消費者ホットライン「188」、**警察相談専用電話「#9110」**に相談できます。
AIで稼ぐなら、AIに運用させるより「AIを使う腕」を売る
「AIが勝手に増やしてくれる」話は、配当の出どころを計算すると成り立ちませんでした。AIでお金を得るまっとうな道は、AIを使って作れるもの(画像・文章の下書き・資料作成など)をスキルとして出品し、依頼を受けて納品することです。ココナラなら登録無料で、元手を預ける必要もありません。
ココナラでAIスキルを出品してみる →判定:「AI投資で月利10%」は成り立たない
月利10%は、複利で10年続けば100万円が約927億円になる数字です。日本最大の年金運用の長期平均(年率+4.95%)と比べて、1年あたり40倍以上の差があります。そして、運用を一切しなくても、新しい人の預け金を回せば10か月は約束どおりの配当が払えます。配当が振り込まれることは、運用が本物である証拠になりません。
「始めやすさ」と「手間の少なさ」だけは満点に見えます。LINEに登録して振り込むだけだからです。楽そうに見える部分だけが満点になっていることが、そのまま入口になっています。
これから:警察が詐欺広告を「探しに行く」段階へ
警察庁の2026年上半期の資料によると、2026年6月からは「サイバーパトロール支援システム」を使い、YouTubeに投稿された詐欺広告等を警察が能動的に探索し、事業者に削除依頼する体制が始まっています(警視庁ではInstagram等への対応も検討中)。また、総務省の違法情報ガイドライン改定とあわせて、インターネット・ホットラインセンターの運用ガイドラインに**「なりすまし型偽投資広告を掲載する行為」を違法情報として追加する予定**とされています。
広告の入口は今後狭まっていく可能性があります。ただ、入口の形が変わっても「月利◯%」「元本保証」「LINEへ移動」「個人名義の口座」という中身の特徴は、計算と確認で見抜けます。
よくある質問
Q. 月利3%くらいなら現実的?
A. 月利3%でも複利で1年回すと約42.6%増、10年では約35倍です。GPIFの長期平均(年率+4.95%)と比べると依然として桁違いで、「毎月3%を約束する」こと自体が、登録業者には許されない勧誘です。
Q. 実際に配当が入っているし、出金もできた。それでも怪しい?
A. 記事の試算のとおり、運用しなくても預け金を回せば一定期間は配当も出金も可能です。金融庁も「最初のうちは出金できる」事例を公表しています。配当や少額の出金は、本物かどうかの判断材料になりません。
Q. 暗号資産の自動売買botも同じ?
A. 料金表を公開している取引所・業者のbotは、費用を計算できる点で別物です。費用の計算は「仮想通貨の自動売買botでほったらかし」の検証で扱っています。FXの自動売買についてはFX自動売買の検証、長期の積立で増やす現実的な数字は「新NISAで億り人」の検証にまとめています。
Q. 払ってしまったらどうすればいい?
A. これ以上振り込まずに、消費者ホットライン「188」または警察相談専用電話「#9110」に相談してください。振込先の口座情報や、やり取りの画面は消さずに残しておきましょう。
というわけで——「月利10%」は、計算した時点で答えが出る
月利10%の広告は、数字そのものが矛盾を語っています。10年で927億円になる運用は存在せず、配当は預け金で払えてしまう。広告で「AI」「月利」「元本保証」を見かけたら、まず電卓を叩き、次に金融庁の登録を確かめる。この2つだけで、入口の多くは避けられます。
この記事の主な参照データ:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年5月22日・https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf)/警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」広報資料・啓発資料(訂正版)(2026年7月30日・8月5日訂正・https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/sagi.html)/金融庁「それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!」(https://www.fsa.go.jp/receipt/toushisagi_koukoku/shuhou.html)/金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」(https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/attention.html)/国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」(2024年5月29日・https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20240529_1.html)/出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律 第1条・第8条(e-Gov法令検索)/年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)公表の市場運用開始以降の収益率・累積収益額(https://www.gpif.go.jp/・2026年9月18日確認)