「新NISAで億り人」の算数——1億円の条件は月10万×30年×年利7%・平均積立額だと約3,100万円【2026年版】

『新NISAで積立するだけで億り人』を検証。1億円到達には月10万円×30年×年利7%がほぼ必須で、実際の平均積立額(月3.9〜6万円)だと30年で約3,100〜4,500万円。円建てリターンの円安寄与、日経平均34年回復の教訓、億り人世帯の実在率(2.8%)まで数字で確認しました。

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「新NISAでオルカンを積み立てるだけで、誰でも億り人になれる」

SNSでも書店でも、この手の話が溢れています。「月10万を30年積めば1億」——数字まで添えられていて、一見すると隙がありません。

でも先に結論を言うと——その計算が成立するのは「月10万円を30年間、年利7%で回し続けられた人」だけです。実際の新NISA利用者の平均積立額は月3.9〜6万円。この現実の金額で年利5%なら、30年で約3,100〜4,500万円です。十分すごい金額ですが、1億円には遠く届きません。

誤解しないでほしいのは、この記事は「積立投資は無意味」という話ではないこと。積立の合理性は本物です。問題は「億り人」という言葉が、前提条件を隠して独り歩きしていることです。

先に結論:ウワサと現実の対照表

ウワサ検証結果
「積立だけで1億円」条件は月10万×30年×年利7%。どれか一つ欠けても届かない
「みんなやってる」平均積立額は月3.9〜6万円。つみたて枠の約2割は買付ゼロで放置
「S&P500は年10%成長」過去30年の実績は本当。ただし直近の円建てリターンは半分近くが円安の追い風
「億り人は普通になれる」純金融資産1億円以上は約165万世帯=全体の約2.8%(野村総合研究所)

検証①:1億円に必要な条件を逆算する

毎月の積立額と利回り別に、30年後の金額を計算します(年複利・概算)。

毎月の積立額年利5%年利7%
3万円約2,392万円約3,401万円
3.9万円(平均例)約3,109万円約4,421万円
5.7万円(平均例)約4,544万円約6,461万円
10万円約7,973万円約1億1,335万円

月10万円でも、年利5%だと1億円に届きません(約7,973万円)。「億り人」の必要条件は月10万×30年に加えて年利7%を30年間——過去のS&P500並みの成績が、今後30年ノーミスで続く前提です。

ちなみに新NISAの生涯投資枠1,800万円を早期に埋めて年利5%で30年放置できれば約7,779万円、年利7%なら約1億3,702万円。「枠を最速で埋められる資金力がある人」なら億は現実的——つまり億り人になれるのは、最初からお金を入れられる人です。

検証②:「みんな月10万」は幻想——現実の積立データ

  • 新NISA口座数は約2,696万口座、累計買付額は約63.1兆円(金融庁・2025年)。1口座あたり平均で約234万円
  • 各社調査での平均積立額は月3.9〜6万円前後のレンジ
  • つみたて投資枠の約21%は年間買付ゼロ、成長投資枠は約29%が未稼働(日本証券業協会)

つまり「口座を開いた人」の相当数がそもそも動かしておらず、動かしている人の中央値も月10万には遠く及びません。「月10万×30年」は上位数%の資金力の話です。

検証③:年利7%は保証されていない

過去30年のS&P500は年率10%超(ドル建て)——これは事実です。ただし3つの留保があります。

  1. 円建てリターンの円安寄与: 2021〜2024年の円建てリターンのうち、半分近くは円安による押し上げという分析があります。為替が逆回転すれば、同じ株価でも円建て資産は目減りします
  2. 回復に時間がかかった実例: 日経平均は1989年の高値を取り戻すまで34年かかりました。S&P500も2000年の高値を(配当除きで)超えるまで約13年。「積立を続ければ報われる」は、この期間を積み立て続けられた人の話です
  3. 暴落は普通に来る: リーマン・ショック時のS&P500は高値から半値以下まで下落。2024年8月の急落では狼狽売りは1割未満に留まりましたが、下落幅が浅く短かったから耐えられた面もあります

将来の期待リターンは、多くの機関が過去実績より低い年5〜8%程度を目安にしています。計算の置き方として「5%なら御の字」くらいが誠実です。

検証④:「億り人」の実在率

野村総合研究所の推計では、純金融資産1億円以上の世帯は約165.3万世帯。全世帯の約2.8%です。しかもその中身は経営者・相続・役員報酬など入金力そのものが大きい層が中心で、「普通の給料から積立だけで1億」に到達した層は少数派です。

「上位2.8%になれる」という話を「誰でもなれる」と言い換えるのが、この手のコンテンツの基本テクニックです。

それでも積立投資が「正解」である理由

ここまで散々水を差しましたが、積立投資そのものは、普通の人が取れる選択肢の中で最も合理的な部類です。

  • 金融庁の資料では、国内外に分散した積立投資を20年保有した場合、元本割れの実績はほぼ消えるというデータが示されています
  • 平均的な積立額(月4〜6万)でも30年で3,000〜4,500万円——「老後2,000万円問題」は余裕でクリアする水準です
  • 新NISAの非課税メリットは本物で、使わない理由はほぼありません

問題は目標設定だけです。「億り人」ではなく「3,000万円」を狙うゲームだと理解していれば、暴落時に狼狽する理由も、怪しい高利回り商品に乗り換える理由もなくなります。

よくある質問

Q. レバレッジ型投信や個別株なら1億に届きますか?

A. 届く可能性と退場する可能性が同時に上がります。「億り人」体験談の裏には、同じ手法で退場した無数の人がいます(生存者バイアス)。少なくとも「積立だけで億」の文脈とは別のギャンブルです。

Q. 月10万円も積み立てられません

A. それが多数派です。積立額を増やす王道は利回り探しではなく家計の固定費見直しと収入側の改善で、実際、支出の見える化だけで月1〜2万円の積立原資が出てくる家庭は珍しくありません。

Q. 今から始めるのは遅いですか?

A. 積立期間が短いほど複利の効きは弱くなりますが、「やらない」との比較なら答えは変わりません。ただし期間15年未満なら、1億どころか「元本割れの可能性も織り込んだ計画」が必要です。

というわけで——億り人は「入金力」の別名

まとめます。

  • 1億円の条件は月10万×30年×年利7%。どれか欠けたら届かない
  • 現実の平均積立額(月3.9〜6万)だと30年で約3,100〜4,500万円——それでも十分すごい
  • 円建てリターンの追い風だった円安は逆回転もある。日経平均の高値回復には34年かかった
  • 結論:「新NISAで億り人」は嘘ではないが、それは毎月10万円を30年入れ続けられる人の話。普通の積立額なら「3,000万円ゲーム」——目標をそこに置けば、積立投資は最強の凡人戦略です

このシリーズでは「儲かるらしい」系のウワサを数字で検証しています。「配当金生活」の検証、「金は損しない」の検証、「不動産クラファンで安心投資」の検証もあわせてどうぞ。


この記事の主な参照データ:金融庁 NISA口座の利用状況調査(2025年)/日本証券業協会 NISA口座の開設・利用状況(2025年)/野村総合研究所 富裕層調査(2025年2月発表)/各証券会社・調査会社の積立額調査(2024〜2025年)/複利計算は年複利・概算(本記事内で算出)

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