「金は絶対に損しない」は嘘——最高値から16.8%下落中・往復コスト1割の実額で検証【2026年版】
2026年1月に史上最高値を付けた金価格は、いまも高値から16.8%下落したままです。1980年からの88%下落の歴史、スプレッドや消費税で消える往復コスト、ETFとの桁違いの手数料差、税金まで実額で検証しました。
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「歴史的な金高騰が続いている、今買っておけば絶対に損しない」「信用できない法定通貨と違って、金こそ資産の本質」
ニュースで「金 最高値更新」の文字を見るたび、こういう話を目にします。
でも先に結論を言うと——「絶対に損しない」は嘘です。金価格は2026年1月29日に1グラム29,815円の史上最高値をつけましたが、2026年9月4日時点では24,822円。ピークから-16.8%下落したままです。しかも1980年の最高値6,945円は、1998年には865円まで88%下落しました。「買えば必ず儲かる」資産ではありません。
ただし全部が嘘というわけでもありません。長期の分散先としては条件付きで本当です。何が嘘で何が本当か、買い方でどれだけ結果が変わるかを、価格データと手数料の実額で検証します。
先に結論:ウワサと現実の対照表
| ウワサ | 検証結果 |
|---|---|
| 「金は絶対に損しない」 | 嘘。2026年1月ピークから-16.8%進行中。1980年→1998年は88%下落 |
| 「今が買い時」 | 高値掴みのリスクが最大化するのが「最高値更新」報道のタイミング |
| 「利息も配当も出ないが安全」 | 値上がり以外の収入源がゼロという意味でもある。下落局面はただ持っているだけ |
| 「金なら手数料を気にしなくていい」 | 現物・積立は往復で1割前後のコストが乗る。ETFなら年0.1%台まで下げられる |
| 「長期で持てば安心」 | 条件付きで本当。ただし買い方次第でコストが桁違いに変わる |
価格推移で見る「今」の位置
まず今がどのタイミングなのか、田中貴金属の小売価格(円/g)で確認します。
| 時期 | 価格(円/g) | ピーク比 |
|---|---|---|
| 2024年1月 | 9,622円 | - |
| 2024年12月 | 13,082円 | - |
| 2025年1月 | 13,676円 | - |
| 2025年12月 | 21,716円 | - |
| 2026年1月29日(史上最高値) | 29,815円 | - |
| 2026年2月2日(急落) | 24,104円 | -19.1% |
| 2026年9月4日(現在) | 24,822円 | -16.8% |
2024年から2年で価格は約2.6倍になりました。上げ相場自体は本物です。ただし2026年1月末につけた最高値からは、7ヶ月以上経った今も2割近く戻せていません。「最高値で買った人」は、まだ含み損の中にいます。
検証①:高値掴みリスク——「最高値更新」のニュースこそ危ない
金の値動きで一番厄介なのは、「最高値更新」のニュースが一番盛り上がるタイミングと、一番高く買ってしまうタイミングが重なることです。
2026年1月29日に29,815円で買った人は、現在の24,822円との差額-16.8%がそのまま含み損です。金は株のように配当が出ないので、下落局面で損を埋める手段は「価格が戻るのを待つ」以外にありません。
さらに歴史を見ると、この手の高値からの下落は今回が初めてではありません。1980年の最高値6,945円は、1998年には865円まで下落しました。下落率にして88%、期間にして約20年です。もちろん当時と現在の市場環境は違いますが、「金は上がり続ける」という前提そのものが、過去に一度は大きく裏切られています。
検証②:見えないコスト——現物とETFで桁違いの差
「金は手数料がかからない」というイメージも実態とは違います。買い方によってコストがまったく別物になります。
- 現物地金:購入時に消費税10%を払いますが、売却時は個人に消費税の納税義務がないため、買取価格をそのまま受け取ります。つまり買値に乗った10%分は戻ってきません。加えて三菱マテリアルの実勢(2026年9月4日)では小売24,855円/買取24,510円で、スプレッドが約1.4%。消費税分とスプレッドを合わせると、往復で1割前後のコストが乗る計算になります
- 純金積立:購入時手数料が1.65〜2.8%、業者によっては年会費が最大1,320円かかります。ここに消費税分も乗るので、コスト構造は現物とほぼ同じ重さです
- 金ETF:信託報酬は年0.10〜0.39%(GLDM 0.10%/1328 0.176%/1672 0.39%)。同じ「金を持つ」でも、コストは一桁違います
| 買い方 | 主なコスト | 目安 |
|---|---|---|
| 現物地金 | 消費税(片道10%)+スプレッド1.4% | 往復1割前後 |
| 純金積立 | 購入手数料1.65〜2.8%+年会費最大1,320円 | 現物とほぼ同水準 |
| 金ETF | 信託報酬のみ | 年0.10〜0.39% |
「価格が2.6倍になった」という値上がり益の話だけを見て、この往復コストを見落とすと、実際の手取りとイメージがずれます。
検証③:利息も配当もゼロという意味
金には株の配当や債券の利息にあたる収入がありません。値上がりだけが唯一のリターン源です。
これは上げ相場では気にならない話ですが、下落局面や横ばい局面では効いてきます。株なら値下がり中でも配当で多少相殺できますが、金は下落中もただ持っているだけで、目減りを穴埋めする収入は一切入ってきません。「安全資産」という言葉の裏には、「増えない期間は本当に何も増えない」という性質があります。
検証④:税金の実額——譲渡所得と50万円控除
金地金や純金積立の売却益は譲渡所得として課税されます(国税庁タックスアンサーNo.3161・No.1460)。
- 年間50万円の特別控除があり、利益がそれ以下なら課税なし
- 保有5年以内(短期):(利益-50万円)の全額が課税対象
- 保有5年超(長期):(利益-50万円)の1/2が課税対象
- 200万円を超える売却は、業者から税務署へ支払調書が提出される
実際の収支モデルで見ると、月1万円を2016年6月から2026年5月まで10年間積み立てたケースでは、投資額120万円に対して評価額は約419万円(コスト控除前)まで増えました。ここから購入手数料・売却スプレッド・消費税分で約9.4万円のコストが引かれ、長期譲渡の税額が約36万円かかっても、手取り利益は約254万円という試算になります。10年という時間と、保有5年超による税の軽減があってこその数字です。
金を売った年は「譲渡所得の計算」が発生します
金地金・純金積立の売却益は譲渡所得で、50万円の特別控除や保有5年超の1/2計算など、計算を間違えやすい所得です。マネーフォワード クラウド確定申告なら口座連携で売買記録を自動で拾えるので、売却した年だけでも使っておくと申告が楽です。
マネーフォワード クラウド確定申告を無料で試す →検証⑤:業者リスク——豊田商事事件という前科
「金は現物だから業者が潰れても安心」というのも過信です。1985年の豊田商事事件では、現物の裏付けがない金取引で被害者約3万人・被害額2,000億円超という戦後最大級の消費者被害が発生しました。
現在の純金積立でも、預けた金の保全方法は業者によって差があります。業者が破綻した場合にどこまで手元に戻るかは、契約している業者の管理体制次第です。「金=絶対安全」という思い込みで業者選びを飛ばすのは、この事件の教訓を無視することになります。
それでも持つなら——条件付きで本当になる持ち方
ここまでの検証を踏まえると、「絶対に損しない」は嘘ですが、「長期の分散先として条件付きで本当」という結論にはなります。成立させる条件は3つです。
- 一括買いではなく積立にする:毎月定額で買えば、高値の月も安値の月も同じ金額分を買うことになり、「最高値でまとめて買ってしまう」リスクを一括投資より抑えられます
- 現物ではなくETFで持つ:信託報酬が年0.10〜0.39%と、現物・積立の往復1割前後のコストとは桁が違います。頻繁に売買しない前提なら、コスト面ではETFに分があります
- 時間を長く取る:今回の試算でも10年という時間軸と、保有5年超による税の軽減があって初めて手取り254万円という結果になりました。1〜2年で結果を求める資産ではありません
逆に言えば、「最高値更新のニュースを見て、現物をまとめ買いする」のは、この検証で一番危ない組み合わせです。
よくある質問
Q. 今(ピークから-16.8%の状態)は買い時?それとも待つべき?
A. 「絶対に今買うべき」とも「絶対に待つべき」とも言えません。1980年の教訓が示す通り、金の値動きは長期でも大きく振れます。一括で判断するより、積立で時間を分散する方が、高値掴みのダメージは抑えやすくなります。
Q. 現物(地金)と純金積立、どちらがいい?
A. コスト構造はほぼ同じ重さです(消費税分・手数料で往復1割前後)。現物は手元に実物が残る安心感、積立は少額から始めやすい手軽さが違いです。コストだけで比較するなら、どちらも金ETFには及びません。
Q. 金ETFなら本当に低コストなだけ?デメリットはない?
A. 信託報酬が年0.10〜0.39%と安いのは事実です。ただし現物のように手元に実物を持てない点、証券口座での売買になる点は現物・積立との違いとして押さえておく必要があります。
Q. 豊田商事事件のようなことは今も起こりうる?
A. 現在は法整備や業者の情報開示が当時より進んでいますが、純金積立の保全方法は業者ごとに差があります。業者破綻時にどこまで保護されるかは契約内容次第なので、金額が大きくなる前に保全体制を確認しておくべきです。
というわけで——「絶対」ではなく「条件付き」で持つ資産
まとめます。
- 「絶対に損しない」は嘘。2026年1月の史上最高値から今も**-16.8%下落中で、1980年には88%下落**の前科がある
- 現物・純金積立は消費税とスプレッドで往復1割前後のコスト。金ETFなら信託報酬**年0.10〜0.39%**まで下げられる
- 金は値上がり以外の収入がゼロ。下落・横ばい局面はただ持っているだけになる
- 売却益は譲渡所得。50万円の特別控除と保有5年超で1/2課税を押さえておくと税負担が変わる
- 豊田商事事件(被害3万人・2,000億円超)のように、業者リスクは現物でもゼロではない
- 「絶対に損しない」資産としてではなく、積立×ETF×長期という条件付きの分散先として見るのが実態に近い
このシリーズでは「儲かるらしい」系のウワサを数字で検証しています。「高配当株で配当金生活」の検証、「サブリース家賃保証」の検証、副業収入の税金まとめもあわせてどうぞ。
この記事の主な参照データ:田中貴金属工業・三菱マテリアル金価格データ/国税庁タックスアンサーNo.3161・No.1460/純金積立各社の手数料公開資料/金ETF(GLDM・1328・1672)の信託報酬/豊田商事事件に関する報道資料(2024〜2026年)