退職代行モームリは儲かるのか——料金22,000円×累計2.7万人・年商3.3億円と、紹介料16,500円で止まった成長の限界【2026年版】

退職代行ビジネスの収益構造を数字で検証。モームリ運営会社の2025年1月期売上約3.3億円、料金22,000円/12,000円、累計利用者26,952名、開業コスト100〜200万円という参入の軽さ、そして弁護士法27条・72条の壁(174人・紹介料16,500円のあっせんで有罪判決)まで、公開情報だけで組み立てました。

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「退職代行って、めちゃくちゃ儲かるらしい」——2026年、この話をよく見かけるようになりました。電話を1本かけるだけで2万円。在庫もいらない。若い人ほど使う。たしかに、聞いただけなら夢のようなビジネスに見えます。

一方で、業界最大手として知られた退職代行モームリの運営会社は、2026年2月に前社長らが弁護士法違反の疑いで逮捕され、8月に一審で有罪判決を受けました。サービス自体は代表交代を経て2026年4月に受付を再開しています。

「儲かる」と「捕まる」が同居しているこのビジネス、実際の数字はどうなっているのか。 公開されている売上・料金・法律の条文だけで、収益構造を分解します。

先に結論:ウワサと現実の対照表

ウワサ検証結果
「退職代行は儲かる」本当。モームリ運営会社の2025年1月期売上は約3億3,000万円(東京商工リサーチ)
「電話1本で2万円の粗利」料金は22,000円だが、民間型が合法にできるのは「退職の意思を伝えること」だけ。単価はここで頭打ちになる
「誰でも始められる」ほぼ本当。開業コストは100〜200万円規模。だから価格競争になる
「大手が捕まったのは運が悪かっただけ」争点は運ではなく構造。紹介料16,500円×174人のあっせんが弁護士法27条・72条に触れると判断された

そもそも:モームリで何が起きたのか

「儲かるのか」を考える前に、事件の経緯を時系列で押さえます。ここが理解できていないと、退職代行ビジネスの利益の天井が見えません。

時期出来事
2022年3月サービス開始。以降、累計利用者は26,952名(2025年1月末時点)
2025年10月22日運営会社と提携先の法律事務所に家宅捜索(弁護士法違反の疑い)
2026年2月前社長ら逮捕。同月、東京地検が弁護士法違反罪で起訴
2026年4月1日代表取締役が交代
2026年4月23日新体制で新規受付を再開
2026年8月28日東京地裁が前社長に懲役2年・執行猶予3年の有罪判決(一審)

問題とされたのは、退職の伝言だけでは対応できない案件を提携弁護士に回し、1人あたり16,500円の紹介料を受け取っていたとされる部分です。2023年6月〜2025年2月の174人分、総額約280万円が立証対象になりました。紹介料を「アフィリエイト広告委託費」などの名目にしていたとされる点も問題視されています。

金額だけ見れば280万円。年商3.3億円の会社にとっては1%にも満たない売上です。それでも事業が止まったところに、このビジネスの本質があります。

検証①:年商3.3億円の中身を割り算する

まず「儲かる」側の数字から。

  • モームリ運営会社の2025年1月期売上高: 約3億3,000万円(東京商工リサーチ)
  • 料金は正社員・契約社員・派遣: 22,000円/パート・アルバイト: 12,000円(税込)
  • 仮に全件を正社員料金と置くと、3.3億円 ÷ 22,000円 ≒ 年間15,000件
  • 365日で割ると1日あたり約41件

累計利用者26,952名が約2年10か月の数字ですから、直近1年に依頼が急増していた計算になります。在庫も店舗も持たずに年商3億円台——ビジネスとしては、間違いなく成立しています。

問題は、この15,000件を「電話1本」で回せるのかという点です。

検証②:22,000円で売っているのは「交渉」ではなく「伝言」

退職代行には3つの類型があり、できることが法律で明確に分かれています。

運営主体相場できること会社との交渉
弁護士5〜10万円交渉・未払い残業代請求・訴訟対応○(代理人として)
労働組合2.5〜3万円団体交渉○(団体交渉権)
民間企業2〜3万円退職意思の伝達のみ×

根拠は弁護士法です。

  • 72条: 弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を扱うことを禁止(非弁行為)
  • 27条: 弁護士が、72条に違反する者から事件の周旋を受けることを禁止(非弁提携)
  • 77条: 違反は2年以下の懲役または300万円以下の罰金

つまり民間型の退職代行が22,000円で売っているのは、「本人の代わりに退職の意思を伝える」という伝言サービスです。「有給を消化させてほしい」「未払いの残業代を払ってほしい」と会社に交渉した瞬間、それは法律事務になり、72条に触れます。

ここが単価の天井です。伝言である以上、22,000円より高くは売れない。かといって交渉まで踏み込むと違法になる。利益を伸ばす方向に、法律の壁が正面から立っているビジネスなのです。

検証③:280万円の紹介料が意味していたもの

依頼者の中には、当然「会社が辞めさせてくれない」「残業代が未払いだ」という交渉案件が混ざります。民間型では扱えないので、弁護士に渡すことになります。

このとき、渡すだけなら合法、対価を取ると27条・72条の問題になるというのが今回の分岐点でした。1人16,500円という金額は、依頼者から受け取る22,000円と比べても小さくありません。伝言だけでは取りこぼす案件が、紹介料に変えれば売上になる——構造としては、収益の天井を越えようとした動きそのものです。

一審判決は、これを「大規模かつ職業的な犯行」「利益を優先させるあまり法令遵守を軽視した」と評価しました(2026年8月28日・東京地裁)。

副業・起業目線で読むべきポイントは、有罪か無罪かではありません。**「単価2万円の伝言ビジネスで年商3億円まで来た会社が、次の伸びしろを取りに行ったら止まった」**という、事業モデルの限界の話です。

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検証④:開業コスト100〜200万円——「参入できる」は「競合も入れる」

新規参入の側から見ます。退職代行の開業に必要とされるのは、おおむね次の規模です。

  • 初期投資: 100〜200万円(PC・オフィス・サイト制作・広告)
  • 月間固定費: 30〜50万円(人件費・賃料・通信費)
  • 運転資金: 3〜6か月分の確保が推奨される

飲食店やコインランドリーの初期投資が数百万〜数千万円であることを思えば、参入障壁は極端に低い部類です。資格も店舗も在庫もいりません。

ただし、参入が簡単ということは、差別化が値段しかないということでもあります。伝言というサービス内容が法律で揃えられている以上、後発が取れる手は「安くする」「即対応をうたう」に寄ります。単価2万円前後の市場で広告費を積み上げれば、1件あたりの利益は簡単に溶けます。

月固定費40万円のモデルで考えると、22,000円の案件が月19件で損益分岐。ここに広告費を月20万円足すなら、月28件が必要です。「電話1本で2万円」は、広告費を無視したときだけ成立する話です。

検証⑤:母数719万人に対して、実績は0.2%

「離職者は毎年たくさんいるのだから伸びしろは無限」という説も検証します。

  • 厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、年間の離職者は約719万5,000人(離職率14.2%)
  • 一方、業界最大手の年間依頼数は前述の試算で約15,000件
  • 母数に対する割合は——約0.2%

さらに、東京商工リサーチの調査では大企業の15.7%が「退職代行による退職」を経験したと回答しています。企業側での認知は確実に広がっています。

つまり市場は成長中で、天井もまだ遠い。ただし単価が2万円で固定されている市場なので、伸びしろは「件数を積む」方向にしかありません。件数を積むには人手が要り、人手が増えれば固定費が増える。労働集約型のまま規模を追う構造になります。

判定:儲かる。ただし「伝言」の範囲でしか儲からない

数字で見えたことを整理します。

  • 退職代行は実際に年商3億円台まで到達できるビジネス(モームリ運営会社2025年1月期・約3億3,000万円)
  • 料金は22,000円/12,000円。参入コストは100〜200万円規模で、資格も在庫も不要
  • ただし民間型が合法にできるのは退職意思の伝達のみ(弁護士法72条)。交渉は不可
  • 単価の天井を越えようとした紹介料(16,500円×174人・約280万円)が、弁護士法27条・72条に触れると判断され、一審で有罪判決(2026年8月28日)
  • 母数は年間719万人の離職者に対し、最大手でも0.2%。市場は伸びるが、単価は伸びない

結論は、「儲かる。ただし儲かり方の上限が法律で決まっている」です。合法の枠内でやるなら、退職代行は単価2万円・粗利は人件費次第・広告費との勝負という、きわめて普通の労働集約サービス業になります。「電話1本で2万円」の部分だけを見て始めると、月19件の損益分岐と広告費の現実に最初にぶつかります。

よくある質問

Q. 民間の退職代行を使うのは違法なの?

A. 利用者側が罰せられることはありません。違法性が問題になるのは、業者が交渉などの法律事務に踏み込んだ場合です。有給消化や未払い賃金の交渉が必要なら、労働組合型か弁護士型を選ぶのが構造的に正解です。

Q. これから退職代行で開業するのはあり?

A. 参入コストは軽い一方、単価は法律で頭打ち、差別化は価格と対応速度に寄りがちです。月19〜28件を安定して集客できる導線(広告・SEO・SNS)を先に設計できるかが分岐点になります。

Q. 労働組合と提携すれば交渉できる?

A. 労働組合には団体交渉権があるため、組合が主体となる形なら交渉が可能です。ただし名義だけ借りて実態は民間企業が処理する形になれば、今回と同じ非弁提携の論点に戻ります。形式ではなく実態で判断されます。

Q. モームリは今も使えるの?

A. 2026年4月1日に代表が交代し、同月23日に新規受付を再開しています。

というわけで——「儲かる話」の天井は、たいてい法律側にある

退職代行というテーマが面白いのは、「儲かるかどうか」の答えが市場ではなく条文の側にあった点です。年商3.3億円まで積み上げた事業が、売上の1%に満たない280万円の紹介料で止まりました。

副業・起業でこの手の「参入が軽くて単価がそこそこ」の領域を狙うときは、**「単価を上げる方向に法律の壁がないか」**を先に調べるのが、いちばん安い保険になります。

このシリーズでは「儲かるらしい」系のウワサを数字で検証しています。「サブリースの家賃保証」の検証、「コンビニオーナー」の検証、副業収入の税金まとめもあわせてどうぞ。


この記事の主な参照データ:東京商工リサーチ(運営会社の売上高・大企業の退職代行経験率)/運営会社の公表による累計利用者数(2025年1月末時点)/報道各社による事件の経緯・判決内容(2025年10月〜2026年8月)/弁護士法27条・72条・77条/厚生労働省「令和6年雇用動向調査」/退職代行サービスの料金相場および開業に関する各種業界情報

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