「民泊は空き部屋を貸すだけで月20万」は嘘——180日ルール・廃業率36%・手数料の実額で検証【2026年版】

民泊の届出5.7万件のうち約36%が廃業、平均稼働は月17.3日。年180日の営業上限、売上の半分が消える手数料構造、転貸の罠まで、観光庁データと実額で検証しました。

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「インバウンドが戻ってきた今、空き部屋を民泊に出すだけで月20万稼げるらしい」

外国人観光客が過去最多を更新し続けている今、民泊はいかにも波に乗れそうな話に見えます。実際、稼いでいる人は本当にいます。

でも先に結論言うと——「貸すだけで月20万」は嘘です。観光庁の公式データを見ると、これまでの民泊届出約5万7,500件のうち、約2万件=36%がすでに廃業しています。平均稼働は月17.3日。しかも民泊新法での営業は年180日までという法律の上限があり、売上が立ってもその5〜6割は手数料と経費で消えます。

「貸すだけ」のはずが、なぜ3件に1件がやめていくのか。法律の建付けから収支の実額まで、順番に検証します。

先に結論:ウワサと現実の対照表

ウワサ検証結果
「空き部屋を貸すだけ」嘘。メッセージ対応・清掃手配・ゴミ処理・近隣対応が毎日発生。丸投げすると売上の20〜35%が代行手数料に
「月20万稼げる」上位物件なら本当。ワンルーム1室の現実的な利益は月5〜15万円
「一年中稼げる」民泊新法では年180日まで。超えると6ヶ月以下の懲役/100万円以下の罰金
「賃貸を借りてやればいい」最も危険。大家の許可なしは契約解除で全損コース
「インバウンドで安泰」廃業率36%。ホテル新設ラッシュとの競争市場

そもそも民泊とは——合法にやる道は3つしかない

まず前提の整理から。日本で他人を有料で泊めるには、法律上の「入口」が3つあります。

①民泊新法(住宅宿泊事業)②旅館業法(簡易宿所)③特区民泊
手続き届出制(ハードル低)許可制(ハードル高)認定制・対象地域のみ
営業日数年180日まで365日OK180日制限なし(2泊3日以上)
設備要件消防設備など構造・設備基準が厳格自治体基準
費用感初期100〜200万円改修込みで数百万円級地域による(新規縮小傾向)

「空き部屋でサクッと」のイメージで始められるのは①の民泊新法だけ。ただしその代償が年180日の営業上限です。1年の半分しか営業できない民泊が、365日稼働のホテルと同じ市場で戦う——これがこのビジネスの基本条件です。

そして届出をせずに人を泊めればヤミ民泊。罰則は6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金で、近年は摘発も強化されています。「バレなきゃOK」の時代はもう終わっています。

検証①:市場の実態——36%がすでに廃業している

観光庁の民泊制度ポータルの数字がこちらです。

  • 届出住宅の累計:約5万7,500件(2026年時点)
  • うち事業廃止:約2万700件
  • 廃業率:約36%。実際に動いているのは約3万7,000件

しかも全国の平均稼働は月17.3日(稼働率約3割)。「出せば埋まる」市場ではなく、新規参入と廃業が入れ替わり続ける椅子取りゲームです。地方では5年以内の撤退が4割超という調査もあります。

インバウンド自体は絶好調です。ただその需要を、ホテルの新設ラッシュと既存民泊3万7,000件で取り合っている——需要が本物であることと、後から入るあなたの部屋が埋まることは、別問題です。

検証②:収支の実額——売上30万円の中身

「月売上30万円」のワンルーム民泊を運営代行に任せた場合のモデルです。

項目金額
月売上300,000円
運営代行手数料(20%)-60,000円
清掃・リネン(15%)-45,000円
OTA手数料(Airbnb等・10%)-30,000円
光熱費・消耗品-25,000円
残り(自己所有の場合の利益)約140,000円
(転貸の場合)家賃-120,000円
転貸の場合の利益約20,000円

ポイントは2つ。

  1. 売上の5〜6割は経費で消える。「売上30万」と「手取り30万」はまったくの別物
  2. 自己所有か転貸かで別のビジネスになる。自分の空き部屋なら月10万円強が残るが、賃貸を借りてやる転貸型は家賃に食われてほぼ残らない

「月20万の利益」に届くのは、月売上60万円級——稼働20日×単価3万円以上を維持できる上位1〜2割の物件です。実例を見ると、浅草駅近の6人定員(1泊5万円×月20日=月商100万円)クラスでようやく手残り40〜50万円。逆にワンルームを代行に丸投げすると、月5〜10万円が現実線です。

検証③:「貸すだけ」の中身——毎日発生する仕事

民泊は不動産投資ではなく宿泊業です。実際の業務:

  • ゲストとのメッセージ対応(チェックイン案内・「Wi-Fiが繋がらない」・深夜対応)
  • 毎宿泊後の清掃手配(1回3,000〜5,000円)
  • ゴミ処理——民泊のゴミは家庭ゴミではなく事業系廃棄物。市の回収には出せず、許可業者との契約が必要。近隣苦情の第1位もゴミ問題です
  • 騒音などの近隣トラブル対応、設備故障、レビュー管理

これを代行会社に丸投げした場合の手数料が売上の20〜35%。つまり**「貸すだけ」は、利益の3分の1を渡して買うオプション**です。しかも消防査察や近隣からの苦情の最終責任はオーナーに残ります。

検証④:転貸(又貸し)型の罠

「物件を持ってないから、賃貸を借りて民泊に出そう」——ここが一番の地雷です。

  • 大家の許可なく民泊に使うと民法612条の無断転貸。契約解除+損害賠償で、家具家電に投じた初期費用100万円級がそのまま全損
  • 許可を取れても、民泊利用は家賃が相場の1.5〜2倍に設定されることが多い
  • 前述のモデル通り、家賃を払った後の手残りは月数万円。競合出店や閑散期で稼働が落ちると即赤字

転貸型で成立するのは、好立地×大人数対応×高単価を全部満たすプロ仕様の物件だけ。「空き部屋がない人でもできる民泊」は、一番割に合わない民泊です。

検証⑤:180日ルールの経済学

年180日制限は、収支の分母を直撃します。

  • 同じ初期投資(100〜200万円)を、ホテル・簡易宿所は365日で回収できるのに、民泊新法組は最大180日で回収しなければならない
  • 繁忙期に全振りしても、家賃・保険・通信費などの固定費は12ヶ月分かかる
  • 本気で回すなら旅館業法の簡易宿所許可(365日営業)が王道になるが、構造基準・改修費で数百万円級の話になり、もはや「副業」ではない

180日で固定費12ヶ月分+初期投資を回収して、なお月20万残す——この算数が成立する立地は限られています。

費用の実額——始める前に出ていくお金

項目相場
家具・家電・寝具一式30〜100万円
消防設備(自動火災報知器・誘導灯など)10〜50万円
届出の代行(行政書士)10〜25万円(自分でやれば0円)
Wi-Fi・スマートロックなど5〜15万円
合計目安100〜200万円

消防設備は建物の構造・規模で要件が大きく変わるので、物件契約の前に消防署へ相談が鉄則です。ここを後回しにして、届出が通らない部屋に家具を入れてしまうのが定番の失敗です。

ゲスト用Wi-Fiは工事不要のモバイル回線という選択肢

「Wi-Fiが繋がらない」はレビューを下げる定番の問い合わせ。FreeMax+5Gはコンセントに挿すだけで使えるホームルーター/モバイルWiFiで、回線工事が要りません。複数物件を運営するなら2台目以降の初期費用0円の法人プランもあります。

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それでもやるなら——数字が成立する条件

廃業率36%の裏で、ちゃんと稼いでいる物件の共通点ははっきりしています。

  • 観光地徒歩圏 or 駅近(実例:浅草駅近・6人定員で月商100万円級)
  • 大人数対応——ホテルの弱点(4人以上の家族・グループ)を取る。単価が1泊3〜5万円に乗る
  • 和室・古民家などの「ここでしか泊まれない」体験価値(地方でも岡山の古民家で月商50万円の実例)
  • 本気で回すなら簡易宿所許可で365日営業——競争条件をホテル側に揃える

そして運営面では、清掃の質がレビューに直結します。星4.5を切ると検索順位が落ちて稼働が下がる世界なので、清掃は削ってはいけないコストです。

清掃の外注は「トライアルで品質を見る」が定石

民泊運営の生命線は毎回の清掃品質です。家事代行・ハウスクリーニングのサービスには初回トライアルがあるので、本契約の前にまず1回試して、仕上がりと相性を確認してから定期契約に進むのが失敗しない順番です。

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税金の話

民泊収入は原則雑所得(規模によっては事業所得)で、会社員は年20万円超で確定申告が必要です。代行手数料・清掃費・OTA手数料・減価償却など経費項目が多いビジネスなので、記録の有無で税額がかなり変わります。

経費が多い副業ほど、記帳は自動化

民泊は毎月の経費項目が多く、手作業の記帳が一番つらいタイプの副業です。マネーフォワード クラウド確定申告なら口座・カード連携で取引を自動取得できるので、開業した月から回しておくと申告期に困りません。

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よくある質問

Q. 自宅の空き部屋(家主居住型)なら簡単?

A. 手続きは同じ民泊新法の届出ですが、家主が同居しているタイプは管理業者への委託義務が緩和されるため、コスト構造は有利です。ただし180日ルールと近隣対応は変わりません。

Q. マンションの一室でもできる?

A. 分譲マンションは管理規約で民泊禁止になっている物件が大半です。規約違反の民泊は差し止め・損害賠償の対象になるので、規約確認が最初の一歩です。

Q. 180日を超えて営業したらバレる?

A. 宿泊実績は2ヶ月ごとに行政へ定期報告する義務があり、虚偽報告にも罰金があります。仲介サイト側のデータと突き合わせる監視も強化されており、割に合いません。

Q. 結局、誰に向いている?

A. 「観光需要のある立地に、使っていない自己所有物件がある人」です。この条件なら月10万円台の利益が現実的に狙えます。物件なし・転貸スタートは、廃業率36%の市場でいちばん弱いポジションから始めることになります。

というわけで——「貸すだけ」ではなく「小さな宿屋の経営」

まとめます。

  • 民泊届出の約36%がすでに廃業。平均稼働は月17.3日
  • 民泊新法は年180日上限。超過・無届けは懲役6ヶ月/罰金100万円コース
  • 売上の5〜6割は手数料と経費で消える。「売上30万」の手残りは自己所有で約14万円、転貸なら約2万円
  • 「月20万の利益」は月売上60万円級の上位物件の話
  • 成立条件は自己所有×観光地立地×大人数・体験価値。転貸ワンルームが最弱ポジション

民泊は「不動産を持っている人の宿泊業」であって、「誰でもできる貸すだけ副業」ではありません。数字が成立する物件を持っているなら挑む価値あり、持っていないなら別の道から——それがデータの答えです。

このシリーズでは「儲かるらしい」系のウワサを数字で検証しています。「サブリースの家賃保証」の検証、「コインランドリー経営」の検証、副業収入の税金まとめもあわせてどうぞ。


この記事の主な参照データ:観光庁 民泊制度ポータルサイト(届出・廃止件数、宿泊実績)/住宅宿泊事業法・旅館業法・国家戦略特区法/民泊運営代行・清掃費用の業界公開資料(2024〜2026年)/民泊の苦情・近隣トラブルに関する調査

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