「おにぎり専門店は儲かる」は本当か——国のモデルは月32万円、ただし毎日100人が条件【2026年版】

行列店が話題のおにぎり専門店は儲かるのかを検証。中小機構J-Net21の持ち帰り専門モデルでは開業資金約282万円・毎日100人で月約32万円が残る一方、1日約53人を下回ると赤字の計算。お米代は1個約39円まで下がりました。

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休日は6時間待ち、1日に1,200〜1,500個を売る——東京・大塚のおにぎり専門店「ぼんご」は、行列店の代表として何度も報道されてきました(ITmedia ビジネスオンライン 2023年5月)。コメの卸や海苔の会社、家電メーカーまでがおにぎり専門店に参入しているとも紹介されています(中小機構 J-Net21)。

では、おにぎり専門店は本当に儲かるのか。2026年9月18日に農林水産省が公表した最新のお米の値段、中小機構の開業モデル、日本政策金融公庫の経営指標、そして行列店の持ち帰りメニューを1つずつ数えた結果で検証しました。

先に結論:ウワサと現実の対照表

ウワサ検証結果
「行列ができるほど人気」行列店は実在する。ただし「ぼんご」は1960年創業で、毎日のように長蛇の列ができたのは2023年時点で5〜6年前から
「お米は安いから原価がかからない」おにぎり1個(お茶わん1杯ぶん)のお米代は約39円(スーパー価格で計算)。去年の同じ週は約56円
「小さな店なら安く始められる」持ち帰り専門・3坪のモデルで開業資金約282万円(J-Net21)
「儲かる」毎日100人×500円なら、月約130万円の売上から約32万円が残る(同モデル)
「行列がなくても大丈夫」お客さんが1日50人だと月約2万円の赤字。分かれ目は1日約53人(同モデルから計算)

そもそも:おにぎり専門店とは

コンビニのおにぎりと違い、注文を受けてから、または店頭でにぎりたてを売るお店です。具の種類が多いこと、1個から気軽に買えることが特徴として挙げられます。

  • おにぎり浅草宿六(浅草):1954年(昭和29年)創業。「東京で一番古いおにぎり専門店」といわれ、『ミシュランガイド東京2019』にも掲載されました
  • おにぎり ぼんご(大塚):1960年創業。平日は2時間以上、土曜・祝日は6時間ほどの待ち時間が発生し、客層には外国人観光客も含まれます。1日に売るのは1,200〜1,500個ほどで、人気が加速したのは2023年時点で10年ほど前、毎日のように長蛇の列ができるようになったのは5〜6年前から。以前は常連客ばかりだったそうです(ITmedia ビジネスオンライン 2023年5月22日)

J-Net21(中小機構)の開業ガイドは、都市圏を中心におにぎり専門店の進出が相次ぎ、コメ卸業者・海苔製造卸会社・製塩会社・家電メーカーも運営に乗り出したと紹介しています。増えている要因として、コロナ禍を経て多くの人がテイクアウトに慣れたことなどを挙げています。

検証①:行列店のおにぎりは1個いくらか——持ち帰りメニューを数えた

「ぼんご」の公式サイトに掲載されている持ち帰りメニュー(2026年版)を、1品ずつ数えました(2026年9月18日確認)。

値段(税込)種類数例
400円35具なし(のり有/のり無)、うめ、しゃけ、辛子明太子、ツナマヨネーズ など
450円14いか明太子、ねぎとろ、スタミナ焼肉、卵黄醤油漬け など
500円5牛すじ、肉そぼろ、明マヨクリームチーズ など
550円1ホッキサラダ
800円2筋子、うなぎ
合計57

いちばん多い値段は400円で、具の入っていないおにぎりも400円でした。2016年8月の記事(メシ通)では、56種類のメニューが「一部を除いてすべて250円」、いちばん高い筋子が550円と紹介されています。定番の値段は10年で**250円→400円(約1.6倍)**です。

検証②:おにぎり1個のお米代はいくらか

農林水産省によると、お茶わん1杯のごはん(約150g)は、炊く前のお米(精米)で約65gです。おにぎり1個をお茶わん1杯ぶんとして、スーパーの平均価格で計算しました。

[スーパーのお米 5kg の平均価格(農林水産省 POSデータ)]
2026年9月7日〜13日      2,971円
2025年9月8日〜14日      4,275円(1年で ▲30.5%)

[おにぎり1個ぶん(精米65g)のお米代]
今     2,971円 ÷ 5,000g × 65g = 約39円
去年   4,275円 ÷ 5,000g × 65g = 約56円
差     約17円 × 1日100個 × 26日 = 月 約4.4万円

農林水産省は、この週の平均価格が105週ぶりに3,000円を下回ったと公表しています(2026年9月18日)。お店が仕入れる業務用のお米はスーパーの店頭価格とは異なりますが、お米の値段が1年前より下がっていることは、おにぎり屋にとって追い風です。

ただし、400円のおにぎりに使うお米代が約39円でも、そのほかに具・海苔・包装、にぎる人の人件費、家賃がかかります。

検証③:お店を開くにはいくらかかるか

J-Net21(中小機構)は、大阪市中央区・従業員1名を前提にした「おにぎり専門店」の開業資金例を公表しています。

項目イートイン型(10坪)テイクアウト専門型(3坪)
物件取得費約200〜300万円約100万円
内装工事費約200万円約60万円
機械設備費約70万円約70万円
什器備品費約20万円約15万円
広告宣伝費約5万円約5万円
商品仕入費約40万円約30万円
営業許可申請手数料約2万円約2万円
合計約537〜637万円約282万円

物件取得費には、敷金もしくは保証金(家賃のおよそ10カ月分)と礼金(およそ2カ月分)などが含まれます。開業までには、食品衛生責任者の資格取得、保健所への飲食店営業許可の申請、消防署への届出なども必要です。

参考までに、日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」では、業種を問わない開業費用の中央値が600万円(平均975万円)でした。3坪の持ち帰り専門店は、その半分以下で始められる計算です。

検証④:1か月でいくら残るか——国のモデルの収支

同じJ-Net21のモデルでは、年間312日(月26日)営業・1日100人・テイクアウトの客単価500円で、年間売上を1,560万円と見込んでいます。1か月あたりに直すと次のとおりです。

[持ち帰り専門・3坪のモデル 1か月あたり(J-Net21)]
売上(100人 × 500円 × 26日)          約130万円
仕入原価(材料費)                    -約55万円
人件費(従業員1名)                   -約22万円
物件賃貸費・水道光熱費・消耗品・返済   -約20〜22万円
  (家賃7万+光熱費3〜5万+消耗品7万+借入返済3万)
残り                                 約31〜33万円
(J-Net21の見込み損益は年372〜396万円)

従業員1名の人件費を払ったあとに、月約32万円が残るモデルです。毎日100人が来れば、店主の取り分として会社員並みの金額が残ります。

おにぎり屋のFCは「資料を並べて」比べる

おにぎり専門店にはフランチャイズで出店する道もあります。加盟金・ロイヤリティの名目・撤退条件は本部ごとに違い、モデル収支の前提(1日の客数・営業日数)も本部ごとに異なります。資料請求は無料なので、説明会に行く前に複数の資料を並べて、この記事の「1日何人で黒字になるか」の計算に当てはめてみると、営業トークに流されにくくなります。

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都合の悪い話

  • 条件は「毎日100人」:月26日営業なら、ひと月で2,600人です。学校でいえば、毎日3クラスぶんの人が買いに来る数です
  • お客さんが半分なら赤字:1日50人の場合、売上は月65万円。材料費と消耗品(袋代)が売上に合わせて半分になるとしても、人件費・家賃・光熱費・返済(約35〜37万円)は減りません。計算すると**月約1〜3万円の赤字(真ん中で約2万円)**です
  • 分かれ目は1日約53人:お客さん1人あたりに残るのは約262円(500円から材料費・消耗品の割合を引いた額)。毎月かかる約36万円をこれで割ると月約1,380人、1日あたり約53人です
  • 小さな飲食店の会社は、利益がほぼゼロ:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2025年度・2026年8月公表)によると、一般飲食店(公庫の融資先の法人464社)の売上高営業利益率は平均−2.2%、中央値−0.4%。1万円売って40円の赤字が「真ん中」です(人件費には役員報酬を含みます)
  • 飲食店の倒産は過去最多:帝国データバンクによると、2026年上半期の飲食店の倒産は473件で、上半期として過去最多・4年連続の増加でした
  • 作り置きがきかない:「ぼんご」の持ち帰りメニューには「おにぎりは傷みやすいので、3時間以内にお召し上がり下さい」と書かれています。売れ残りはそのまま損になります

それでも残る「出口」

  • 行列は積み重ねの結果:「ぼんご」も、毎日行列になる前は常連客ばかりの店だったと報じられています。毎日来てくれる人を少しずつ増やすことが、53人の壁を越える近道です
  • 小さく始められる:3坪の持ち帰り専門モデルなら家賃は月約7万円。開業資金も、全業種の中央値600万円の半分以下です
  • お米は下がっている:1個あたりのお米代は、去年の約56円から約39円に。1日100個売るお店なら、月約4.4万円ぶん材料費が軽くなる計算です
  • 場所で売り方を変える:J-Net21は、高速バスや新幹線の乗り場近くでは出来たてが好まれ、時間に余裕がないビジネス街ではすでに握られているほうがニーズが高いと指摘しています

開業するなら、帳簿は営業初日より前に

おにぎり屋の損益は「1日何人来たか」で黒字と赤字が入れ替わります。材料費・袋代・家賃・光熱費を毎日つけていないと、自分が分かれ目の何人上にいるのかが見えません。マネーフォワード クラウド確定申告なら、口座やカードと連携して記帳を自動化でき、個人事業の青色申告にもそのまま使えます。

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判定:ずんだ検証ラボ「ウワサ格付け」はCランク

5つの物差し(各1〜5点・高いほど取り組む人に有利)で採点しました。

軸点数理由
再現性2国のモデルは毎日100人が前提。小さな飲食店の会社の利益は中央値で−0.4%
稼げる額3毎日100人なら月約32万円が残る(J-Net21モデル)
始めやすさ23坪の持ち帰り専門でも開業資金約282万円。資格・営業許可・消防署への届出が必要
リスク21日約53人を下回ると赤字。飲食店の倒産は上半期で過去最多
手間1月26日営業で毎日にぎる。3時間で傷むため作り置きがきかない

合計10点でCランク。「毎日100人が来れば会社員並みに残る。ただし、そこに届くまでが長い」というのが数字の答えです。行列店は、何十年も常連を積み重ねた結果として生まれています。

これからどうなる

お米の値段は、2026年9月に105週ぶりに5kgあたり3,000円を下回りました(農林水産省)。材料費が軽くなれば、新しく始める人が増えるかもしれません。一方で、お店どうしの取り合いは強くなる可能性があります。早めに常連をつくれるかどうかが、これまで以上に効いてきそうです。

よくある質問

Q. おにぎり1個のお米代「約39円」はどう出した?

A. 農林水産省が示す「お茶わん1杯のごはん(約150g)=精米約65g」を1個ぶんとし、農林水産省のスーパーPOSデータ(2026年9月7日〜13日の平均2,971円/5kg)で計算しました。お店が仕入れる業務用米の価格とは異なります。

Q. 月約32万円はどこの数字?

A. 中小機構 J-Net21「おにぎり専門店」開業ガイドの、テイクアウト専門型(大阪市中央区・従業員1名・3坪)のモデルです。年間売上1,560万円、見込み損益372〜396万円を1か月あたりに直しました。

Q. 「1日約53人」はどう計算した?

A. 同モデルの1か月の支出のうち、仕入原価(55万円)と消耗品(7万円)は売上に比例、人件費・物件賃貸費・水道光熱費・借入金返済(約35〜37万円)は固定として、客単価500円・月26日営業で割りました。光熱費の幅により約52〜54人になります。

Q. ぼんごのメニューはいつ数えた?

A. 2026年9月18日に、公式サイトに掲載されている持ち帰りメニュー(2026年版)を数えました。店内の注文や期間限定メニューは含みません。

というわけで——「行列」は結果で、「53人」がスタートライン

おにぎり専門店は、小さく始められて、お米の値段も下がっている今、数字の上では成り立つ商売です。ただしそれは、毎日100人が来てくれた場合の話です。行列を夢見る前に、「1日53人」を毎日超えられる場所と常連づくりの見通しを立てられるかどうかが分かれ目になります。

街で見かける商売の数字は、「キッチンカーは低リスクで月商100万」の検証、「冷凍餃子の無人販売はほったらかしで儲かる」の検証、「自販機を置くだけで儲かる」の検証でも比べられます。


この記事の主な参照データ:農林水産省「スーパーでの販売数量・価格の推移(POSデータに基づき作成、全国・週次)」(2026年9月18日公表・https://www.maff.go.jp/j/nousan/kokumotu/kome_kakaku.html)/農林水産省「消費者の部屋」茶碗1杯のごはん(https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1806/03.html)/中小機構 J-Net21「おにぎり専門店」業種別開業ガイド(2023年11月8日・開業資金例・運転資金例・売上計画、https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/restaurant/g003.html)/日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」2025年度(飲食店,宿泊業・2026年8月公表)/日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日)/帝国データバンク「『飲食店』の倒産動向(2026年上半期)」(2026年7月22日)/ITmedia ビジネスオンライン「大塚『おにぎり ぼんご』はなぜ人気なのか 休日は6時間待ち」(2023年5月22日)/メシ通「創業56年のおにぎりの名店・大塚『ぼんご』」(2016年8月3日)/おにぎり専門店ぼんご公式サイト 持ち帰りメニュー2026年版(実測、2026年9月18日)/おにぎり浅草宿六 公式サイト/MATCHA「『ミシュランガイド東京2019』掲載!浅草の老舗『おにぎり浅草宿六』」

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